『この悪魔!!!』



初めてそう呼ばれたのはいつだっただろうか。
多分、母親だった気がする。
両親のどちらにも似ていない緑髪を気味悪がり、
同じくどちらにも似ていない金色の眼を怖がっていた。
大人のクセに、まるでガキのように感情を露にして泣き叫んでいたのが記憶に残っている。













「この悪魔!」


全く同じ台詞と共に、思い切り殴られた頭がずきりと痛んだ。
大人は嫌いだ。ビーダマン勝負に負けると、実力行使で抵抗する。
そんな苦労をしてまで手に入れたビーダマンは、二千円もあれば手に入る量産型。
ああ、でもマガジンパーツは最新のものだから、バラして使えるか。
手際よく分解して、マガジンをコートのポケットに押し込めると、再び鈍痛が頭を襲う。

仕方なく灰白色の石壁にもたれるように座り、痛みをやり過ごす。
じっとするのは苦手だ。動いていないと、何かに浸食される気がする。
ズキズキズキズキ。頭が痛い。
大丈夫だとは思うが、一応手当てをしなければならないかもしれない。
そう考えた瞬間、意識の奥から、誰かに無理矢理引きずり込まれ、『落とされた』。





































気づくと今にも崩れそうな鐘つき塔にいた。
この場所で意識が戻るのは三回目。最近の彼のお気に入りなのだろう。
どうしてこうも崩れそうなところが好きなんだろうと溜息を吐きつつ、時計を確認。

「ん……三時?」

意識が無かったのは、一時間と少しといったところか。
今日は珍しく早く大人しくなったなと思った瞬間、酷い頭痛がした。
病気じゃない、外傷による痛みだ。
成程。弱っていたから引っ込まざるを得なかったらしい。
他に怪我はないかと身体を触って確かめていると、頬がぬるりと湿っていたのに気がついた。
顔にまで傷がついてたら目立つのに!
ビーダマンのこととなると周囲も自分も見えなくなる彼に、ふつふつと怒りが沸く。
文句の一つでも言いたいが、その相手は深い眠りについている。

仕方なく黙って手袋で血と思しき液体を丁寧に拭ったが、







「…………………………あれ?」







その色は、透明だった。
















時間的には第4話のちょい前ぐらい

03 二重人格>>>