愛すべき馬鹿
霧香 楓様へ 「バレネタで、それでも喧嘩してるシカナル」
「最近、大規模な人攫いが横行している」
ナルトが三代目火影に呼び出されて、
仕方なく出向いてみるといきなりそんなことを言われた。
「は、今更じゃん」
下忍を、というよりは名家の子供を早いうちに殺したり、攫うことはよくあることだ。
実際サスケやヒナタたちの家、うちはと日向は昔から特に狙われやすく
ナルトも彼らの護衛をかねてアカデミーに入学したのだ。
「今までに類を見ないほど大勢で、何でもどこぞの里の実力者を引き込んでいるらしく・・」
「ふーん、別に関係ないし。全く、こんなことで一々呼び出すなよ、じーちゃん。
そこまで俺のこと弱いと思ってんだら仕事減らして?」
妙な汗を掻きながら目を逸らすじーさんに、「冗談」と笑いながら言い残し執務室を出た。
「はーい、今日は合同任務です」
「先生・・またですかぁ?最近多いですよ!!」
サクラがカカシに抗議する。
合同任務が嫌というよりいのと一緒にいるのが嫌なのだろう。
当のいのはサスケに愛想よく話しかけている。・・相手にされていないが。
「しょうがないんだよー、ま、いいじゃない」
イチャパラから目を放さずカカシがサクラに応える。
「なー先生!今日は何の任務やるんだ!?」
キバははしゃぎながら赤丸を連れて紅に尋ねる。
騒ぐのが好きなキバは大人数の任務に不満は全く無いようだ。
「今日は草むしりをしながら特定の薬草の採集よ」
「おい、紅。さっさと始めさせようぜ?こんな広くちゃそうそう終わらねぇだろ」
アスマが言った言葉に紅は首を振る。
「まだ七班のナルト君?来てないのよ」
「おいおい、カカシの遅刻癖がうつっちまったのか〜?」
笑いながらも、アスマは目が笑っていない。
それに紅も重々しく頷く。
キバの関心が逸れてヒナタたちの元へ行ったのを見届け、アスマは小声で囁く。
「この尋常じゃねぇ気配・・例の奴らか?」
「多分ね。どこで合同任務だって漏れたのかしら」
「さーな・・・ともかくカカシも気づいてるだろうし、どっかにあいつら隠して一気にやるか・・」
「でもすごい人数みたいよ?隠し通せ・・」
紅は言葉を切った。一人の少年がひょっこりと顔を出してきたからだ。
「先生〜、遅れてごめんってばよ」
「おせぇぞナルト。まじでカカシに似たのかと思ったぜ?」
「違うもん。俺ってばカカシ先生みたいにはならない!」
散々今までカカシに待たされていたのだろう。
そりゃぁもう、担当上忍であるにも関わらず凄まじい勢いで否定された。
「ナルト!!」
後ろからまた少年の声がする。
「シカマル?やっほ、遅くなって悪ぃ」
「違う、そんなことどうでもいい。それより・・!!」
シカマルはナルトの肩を勢いよく掴んで強い口調で何か言おうとしたが、
結局何悔しそうにしながら口を閉じた。
アスマはいつもダルそうにしているあの彼がここまで声を張り上げることがあったのか、と密かに驚いた。
「アスマ」
「おい、おまえらちょっと集まれ!」
紅の呼びかけに一度頷いてから下忍たちを呼び寄せる。
皆が皆、というわけでもないが一部のものは微妙な顔をしている。
上忍たちの顔つきがいつもと少しばかり違うのに気づいているのだろう。
「敵が来る。狙いはおまえたちだろうな。いいか、これからは集団で動け。
決して単独行動はするな、敵に立ち向かうこともだ」
最後の言葉をナルト、サスケ、キバに向ける。
この三人は随分と好戦的な性格だからだ。
「これから結界を張るわ。・・まあ私が余裕無くなったら勝手に解除されちゃうから、
そうなったら気配を消して人目につかないよう迅速に里に戻って報告を頼むわ」
「いや、結界は俺が張る」
いきなり男の声が、だがカカシともアスマとも違う声がした。
紅がさっと横を見ると、狐面の暗部が立っていた。
下忍たちはすぐに警戒を顕にしたが、上忍たちは何故かほっとしたような顔をした。
「なんだ、コノトだったの」
「なんだとはなんだよ。わざわざ助けに来たんだぜ?感謝してほしいぐらいだ」
「勿論。あなたがいれば百人力ですもの」
「ってことで俺が結界張る。いいよな?」
「ってことで・・って何だよ!ついでに言うとあんた誰ですか!?」
キバが下忍全員の心情を代表するかのように叫ぶ。
それにカカシが答えた。
「うーんとねぇ、コノトってのは今の木の葉の里で実力は一、二を争う暗部なんだよ。
だから安心していいと思うよ〜?」
その言葉にコノトと呼ばれた青年は釘を刺した。
「言っとくが、俺はぶっちぎりでナンバーワン」
「えー、でもカノコも・・」
「うっせぇ!!あいつより俺の方が上だからな!」
「おいおい、今はそんなことどうでもいいだろうが。さっさと張っとけ」
アスマがカカシと、カカシに食って掛かっているコノトを引き離してなだめる。
「はいはい、あー、結界の中にてめぇら上忍もいろよ?万が一ってことがあるだろ」
そう言いながらコノトは固まって呆然としている下忍たちの中にアスマたちを押し出した。
「俺たちもかよ!?」
「おまえもだよ熊」
話を遮られたのが不満だったのだろうか、冷淡な声でそう言い放ちさっさと印を組む。
アスマがさらに何か言う前に、薄いチャクラの壁が出来上がっていた。
「ちょっと!いくらなんでもあなた一人じゃ無理よ!!出して!」
「大丈夫だよ紅。俺がまじ危なくなったらこの結界勝手に解けるから」
「そういうことじゃないよー、せめて俺だけでも出して?」
カカシはゆっくりと、だが否と言わせないぐらいの気迫でコノトを見る。
「だめ。それだったらこの結界が解けたら助太刀に来いよ?」
にぃっと意地悪そうな顔でコノトは笑って、今度は下忍たちに顔を向ける。
「こいつらちゃんと守れよ、カノコ」
コノトはそれだけ言うと音も立てず消え去った。
何を言っているのか、声を出して喋っているわけではなかったのでわからなかった。
上忍たちも妙な顔をしている。
「何て言ってたか、読めた?」
「読めるわけ無いでしょ。あいつ、読唇されないように暗号も組み合わせてたのよ!?」
「じゃあ、下忍がわかるわけねーだろうに。・・・何だったんだ?」
「「さぁ?」」
三人はぼーっと呆けている下忍たちを見下ろして、首を傾げた。
「ねぇ、もう一時間も経ってるよ」
スナック菓子を食べ終えたチョウジが、誰にというわけでもなく話しかけた。
いのが小さく頷いて上忍たちを見る。
「先生、この結界って内側から解けないんですか?」
「大抵のはこれだけ忍者がいれば、強力な術の複合でぶっ壊すこともできるんだがなぁ。
何せあいつ、用意周到に二重の結界を張ってなぁ・・・とてもじゃないが俺たちには解けん」
アスマが力なく横に首を振った。
サスケも小さくため息をつく。
先ほど、いらついてこの結界に火遁の術を使った。
見事その業火は結界に吸収され、何事も無かったかのように消えた。
その後、今度はカカシが雷切を使ったが同じく無駄に終わった。
同じくシノもチャクラを喰う虫を結界にはっつけてみたが、結界が歪むことさえなかった。
「すごいチャクラ量だなぁ」
誰かが漏らしたのに、皆頷いた。
だがナルトとシカマルは頷かなかった。
「ナルト、シカマル・・どうしたの?」
ナルトは力なく微笑み、シカマルはそれを見て眉間に皺を寄せて顔を顰める。
様子がおかしい。
近くにいたヒナタとキバが元気の無いナルトを心配して話しかけようとすると、
いきなりナルトが煙と共に消えてしまった。
それは、七班にはよく見慣れたものだった。
「あのナルト、影分身だったのか!?」
カカシが焦ったように声を荒げる。
つまり、ナルトはこの結界の外にいることになるのだ。
コノトが先に見つけていてくれればいいが、その可能性はあまりに低い。
皆が慌て始めた中、ナルトの分身の隣にずっと座っていたシカマルが立ち上がり、
結界の壁に向かい合った。
シカマルは右手に目で見えるほど大量のチャクラを込めて、力の限りぶん殴った。
壁にひびが入る。
更に殴り続けると、人一人分通れるほどの穴が開いた。
一同は驚きながら、ただ呆然と見守っていた。
シカマルがそんな力技をすることに、大量のチャクラに、結界を崩したことに。
そんなリアクションをものともせず壁をくぐって行こうとしたシカマルの腕をアスマが掴む。
「待て、外は危険だ。俺たちがナルトを探しに行くから、おまえたちはここにいろ」
シカマルがナルトと仲が良いのはよく知っていた。
ナルトがいなかったことでシカマルは出て行こうとしているのだ。
アスマはそう見当をつけて、できるだけ優しく諭すように言った。
だがシカマルはゆっくりと首を振る。
「はなせよ、アスマ。俺は助けに行かなきゃいけねぇ」
ピリピリとアスマに冷たい電気のようなものが体中を走った。
これは恐れだ。この見慣れた小さい子供に今、自分は恐れに似たものを肌で感じている。
何故気づかなかった。
こいつはシカマルじゃない。少なくとも、俺の知っているシカマルではない。
アスマがそっと手を放すと、シカマルはすまなそうに笑って駆け出していった。
あー・・・・ここどこだっけ。
美しい木々に囲まれていたこの草原は、所々血しぶきで赤に汚されている。
クナイを握る形で手は何故か固まっていて、放そうとしても放せない。
流石じーちゃんが『大規模』と言っただけあって、いくら殺っても殺っても湧いて出てくる。
後ろから何か空を切る音がして、反射的にクナイを後ろに振り回す。
一人の刀を持った忍者の腹に、コノトの振り回したクナイが突き刺さった。
あらかた殺ったのに、まだここにいたんだ。
コノトは他人事のように死体を見下ろし、全身の痛みを堪えながらも歩き出す。
逃がしたやつを追いかけていったとき、ある忍者は叫んだ。
『修羅だ』
修羅で結構。鬼で結構。
俺たちに手を出そうとしたのが悪いんだ。
俺が、俺たちが笑っていられる場所を侵害しようとしたおまえらが悪いんだよ。
のろのろと歩いていたがしばらくして膝をついた。
毒でも仕込んであったのか、ふくらはぎが痙攣を起こしていた。
それを見計らったかのようにぞくぞくと黒装束の男たちが現れる。
・・・まだこんなにいたのかよ。
コノトは懐から武器を取り出そうとしたが手を止める。
そうだった、あのクナイが最後のだったんだ。
こんなとこで俺の人生は終わるんだ。
へー、本当短い人生だこと。
こんなことならカノコにラーメン奢らせる約束、昨日にしてもらえばよかった・・・・。
ゆらゆらと近づいてくる男たちを見て、コノトはそう思った。
相手方は抵抗しないことを確かめ、そのうちの一人が刀を振り下ろす。
時間的には数秒にも満たないのに、振り下ろされる刀はとてもゆっくりと、スローモーションに見えた。
「おい、さよならにはまだ早いぞ」
頭上から、カノコの声が聞こえた。
「・・・・・カノコ?」
コノトの前にカノコが立っている。
先ほどの、クナイは?敵は?
混乱しているコノトの耳に、僅かな音であるのに、水の滴る音がした。
音の元は、カノコの背から腹部に貫通した刀の切っ先から滴っている赤い血だった。
俺を、俺を庇ったのか?
コノトが何を考えているのか悟ったらしいカノコは、笑った。
「これぐらい俺がぱぱっと片付けられるしな、寝てろ」
「・・だ、誰が。おまえ頼りになんないし、おちおち眠れるかってんだ」
そう言ってゆっくりと、大岩に手を掛けながら立ち上がるとカノコは二本クナイを渡した。
流石、わかってるじゃん。
すると、カノコは自分に背を向けて止まる。
「何?」
「邪魔だからこれ抜いてくれ」
いや、刺さっているもの抜いたら血がどばどば出るぞ?
言おうと思ったがそんなことカノコだって理解しているだろう。
俺は黙ってそれを抜いて、捨てた。
俺たちが結界から出ると、すごい血の臭気がした。
人の気配がする方に、カカシが先頭となって下忍、俺と紅・・という順で走った。
ここで、下手に下忍を置いていけばかえって危ないと判断したからだ。
しばらく平地を走ると、カカシは立ち止まった。
「戦ってる」
俺たちもカカシの脇から覗いてみると、確かに戦っていた。
コノトと、あともう一人・・おそらくカノコだろう。
舞うように敵を切りつける二人を、俺たちは、ただ見ているだけだった。
あらかた片付いたところで、コノトとカノコはこちらを向いた。
俺たちが駆け寄るとコノトはどかっと座り込んだ。
よく見ると両足からだらだらと血が流れている。かなり深そうな傷だ。
「大丈夫なの?その足。」
「あー、もう動けない。カノコ運んで」
「そういえばカノコも来てたのね」
「ああ」
カノコと呼ばれた黒髪の青年は紅の問いに答えながらもコノトを見下ろす。
「あー、二人ともナルトとシカマル見てない?
一人は金髪で青眼の子で、もう一人は黒髪で後ろで括ってる奈良上忍みたいな子なんだけど」
「「・・・・・」」
二人は黙っている。
コノトはカカシの問いには答えず、カノコを見上げながら尋ねる。
「・・なんでそんなチャクラ消費してんの?」
「おまえがただでさえ厄介な結界をわざわざ二重にしてくれたからな」
「まさか、無理矢理ぶっ壊したのか!?」
「時間が無かったし。そういうおまえだって、もう限界だろ」
「俺はまだ持つ。30秒」
「俺は31秒」
静かな火花が二人の間に散っている。
「何の話してんのー?」
二人はカカシを同時にぎろっと睨みつける。
が、すぐにそれを止めて慰めるようにカカシの肩を双方それぞれ叩く。
「これからすごい驚くと思うんだなー」
「でも俺たちとっても疲れてて今すぐにでも倒れたいわけ」
「ってわけで、俺たちが倒れたらちゃんと運べよ?」
「そういうわけで、おやすみ」
それだけを言い残すと、煙と共に前のめりにカカシの方へ倒れる。
痩身とはいえ身長はあるコノトとカノコに同時に倒れられては支えるこちら側が辛い、
と思ったがそんなことはなかった。
胸に寄りかかり、白煙を発していた二人はずっと小さかったのだ。
それこそ、今ここにいる下忍たちと同じぐらいに。
というか、
「「「「「「「「「「ナルトとシカマル!!!????」」」」」」」」」」
当の本人らはそりゃぁもう、気持ちよさそうに眠っていた。
三代目に色々報告をし、次の日に病院に直接来るよう彼らは申し渡された。
ナルトがコノトでシカマルがカノコ。
信じられない。
特に上忍たちがそうだった。
なにせ、彼らはずっと前からコノトとカノコの存在を知っているのだ。
逆算すれば二人は二桁にも満たない年のころからずっと暗部に身を置いていることになる。
病院の正面玄関で皆待ち合わせをすることにした。
下忍たちは勿論、カカシもいつもと違い遅刻をすることなく時間通りに現れた。
二人の病室は何故か大量の幻術やらトラップやらを仕掛けられた通路の奥にあった。
よく考えれば二人とも里のトップなのだ、それぐらい当然なのかもしれない。
なんとかドアの前までたどり着き、開けると、二人はちゃんとそこにいた。
ナルトは痛々しいほど包帯を巻かれ、かろうじて首から上がちゃんと見えるぐらいだった。
シカマルもどうやらあの結界を強引に解いたのは凄まじい負担となっていたらしい。
使った右腕は包帯はもちろん動かないようにギブスで固定されていた。
よく見ると腹部にも治療が施されている。
二人ともかなりの重傷だ。
とても、本当にとても重傷なのだ。
なのにどうしてこいつらはベッドから降りてにらみ合いをしているんだ!?
「・・えーっと、とりあえず怪我はどうなの?二人とも」
カカシが困ったように尋ねる。
この二人をコノトとカノコとして扱えばいいのか、それともナルトとシカマルとして扱うべきだろうか。
「俺は全然、平気だぜ?そこの後ろから腹をぶっさされた阿呆よりは!」
ナルトが横目でシカマルを見ながらそう答えた。
シカマルも元々目つきの悪い目を更に悪くしてナルトを睨みながら答える。
「俺も平気ですよ。そこの分身も保てなくなるほど禁術ばかり多用して最後にゃ自滅しかけた馬鹿よりは」
お互い殺気にも似たものを発しあいながら、にらみ合う。
だがそれは一瞬のことで、ナルトはこちらを見ていくつかの椅子を指差した。
「そこに椅子あるよ、座れって。立ち話もなんだろ」
「いや、二人ともベッドにいけよ。怪我人が床に座ってんのに俺たちが椅子に座れるか」
アスマがそう言うが二人は首を横に振る。
「俺はとっくに回復してるんでね。ま、シカマルは寝ておけばいいんじゃない?」
「寝るべきなのはおまえだろ。俺は入院するほどの怪我でもないしな」
お互い相手のベッドを指し示す。
要するに、子供っぽい意地の張り合いだ。
・・いや、そういやこいつら年齢的にも本当に子供だった。
とりあえずどうやって二人をベッドに戻そうかとアスマたちが考えていると、
いのとサクラとヒナタが二人の前に歩み出た。
「シカマル、ナルト」
「何だよサクラちゃん・・」
「二人ともベッドに戻って?」
いのはシカマルに言う。
「「だから・・・」」
「だって、二人とも私たちを守ってくれて、それでこんな怪我しちゃって・・。
も、もしこのまま二人の怪我が悪化して死んじゃったら・・・・う、ひっく」
ヒナタが畳み掛けるように泣き出す。
う・・・とナルトとシカマルは目に見えて狼狽えた。
それに同調するかのようにサクラといのも少しだが涙ぐんでいる。
二人はばつが悪そうに顔を見合わせて、渋々ベッドに戻っていった。
「・・・・・すごいな」
「もともとシカマルは女子には優しいけどね」
「だけどナルトにも効くなんて・・三人寄れば文殊の知恵か!」
「「いや、それ微妙に違う」」
シノ、チョウジ、キバは横で喋っている。
「ってか、何か聞きにきたんじゃなかったのか・・?」
サスケが呆れたように尋ねた。
「あー、そうそう。じーちゃんも答えてやれって言ってた!」
カカシはそれなら・・と尋ねた。
「何で二人は暗部やってるの〜?!」
「え、言いたくない」
「それ聞くために来たようなもんだぜ!」
「・・・じゃぁ、それに答えたらもう何も聞かないってならいいよ?」
一同頷く。
二人は顔を見合わせて、まるで示し合わせたかのように答えた。
「「いい稼ぎになるから」」
物凄く不満顔の上忍たちは置いといて、同期の皆は存外普通だった。
もともとコノトもカノコも下忍たちの間ではさほど有名ではなかったからだろう。
いのたちなどは「次は花でも持って来てあげる」と言い残して帰っていった。
よくよく考えてみると、この部屋に先ほどまで十二人もいたのだ。
自分ら二人を残して帰ってしまうと、急に静かになる。
机に置かれた缶ジュースを手に取ると、手の震えが伝わって
ジュースの中身が僅かにこぼれ出て白いシーツに薄いシミができた。
シカマルは気づいているだろうに、あえて何も言わずじっと前を向いている。
「なぁ、シカマル」
「・・・・んだよ」
「俺、あいつらがここに来たとき、すっげぇ怖かった」
「・・・・・・・・・」
「九尾の器で、異常なほど強くて、もう俺って怪しまれる要素十分すぎるじゃん」
「・・そうだな」
「でもさ、あいつら、信じてくれたな」
「・・・・そうだな」
「馬鹿だよな、こんな俺を信じるなんてさ」
最後のほうの言葉は震えていた。
シカマルは、ベッドを降りてナルトの側に行き、くしゃくしゃとナルトの頭を包帯の無い左手で撫でた。
「それなら俺は最初の馬鹿だな」
とりあえず、最初に謝っときます。
ごめんちゃい!(ふざけんな)
NARUTO→