今日は駅前でケイタと待ち合わせ。
本当は十一時に会う予定なんだけど、もう随分その時間からは過ぎていた。
勿論わざと。
私、怒ってるんだから。
この前も折角ケイタの為に誕生日デートの予定立ててたのに、
あいつったら『ごめん、部活の連中が無理矢理お祝いパーティ開くって言い始めて・・・』よ!?
何よ、彼女よりも部活の友達?
そりゃ・・・・高校入ってまだ日が浅いから、そういう付き合いも大切だってことはわかるけど、
それでも彼女とのデートより大事なわけ!!
もう別々の高校入ってから、一ヶ月ぐらいロクに会ってなかったし。
あいついーっつも待ち合わせに遅れるし。
だから、今日は私が遅れてやる。
たまにはこういう意趣返しとかもしたい気分なのよ。



バスは結構空いていた。
お婆さんとお爺さんの二人が、一番前に座っている。
あとはおばさんと、大学生っぽいお兄さん。
折角の土曜日だっていうのに、ホント空いてるわね。
一番奥の座席に座って、変わり映えのしない風景を眺める。
木ばっかり。
これだから田舎ってつまらないわ・・・。
早く大学生になって上京したいー。
そういえばケイタはどうするんだろ。
あいつのことだからきっとまだ何も将来のことなんて考えて無いんだ。
プロ野球選手になるとか言い出してもおかしくないわね。




ふと、沢山の花束が置かれた場所をバスが通り過ぎた。
何かあったっけ。
この季節だから・・・・七夕?
んー、もしかしたら何かあったかもしれないけど、思い出せない。
家に帰ったらお母さんに聞いてみようかな。
・・あ、何かかっこよさそーな人発見。
花束置いてるよ。
やっぱり今日って何かあったのかな。
かっこいー・・・・・・・大学生ぐらい?
ってか妙にケイタに似てる。
嘘、私の理想ってマジでケイタ?信じらんなーいっ!
あんなヤツ、私がもっと大きくなってカッコいい男捕まえたら即ポイなんだから。
ふん。
・・・・・・・・・・・・・・ケイタ、もう待ちくたびれて帰っちゃったかな・・・









目的の一つ前のバス停で、乗り込んできた人たちがいた。
珍しい。
この近くって何か民家みたいなのあったっけ?
んー、無かった・・・気がする。
もしかしたら引っ越してくるとか。物好きねー、すっごいわ。
物好きといえば服装も変!!
着物の小さい女の子と背広の若い男の人なんだけどさ。
あ、男の人の方は結構私好みかも。
ちょっと気が荒そうだけど、逆にそういう人ほど私みたいなのとは気が合うのよねー。
でも着物の女の子の方は、何かすごい変っぽい。
めちゃくちゃ大きなドラ焼き食べてるし、何より着物の色。
真っ黒だよ。
私、そんな着物着てる子なんて滅多に見ないよ。
普通赤とか青とか可愛い色じゃない?
あれじゃまるで・・・・・・・・・・・・・喪服みたい。
ん?ちょっとイケメンのお兄さん何か取り出そうとしてる?
意外に薔薇とか!!
『可愛らしいお嬢さん。あなたに・・・・』とか、とか!!!
なんちゃってね、そんなわけな




ズドン






何か、聞きなれない音が聞こえた。
一瞬ホントにわけがわからなくて、何も考えられなかった。
ううん、わかってたんだ。
でも、その出来事を頭で理解できなかっただけ。
だって、そんな、人が、撃たれるなんて・・・・・



ズドン、ズドン



男の人は、構わず近くにいる人を撃ち始めた。
お兄さん、おばさん、ご老体の夫婦も。
女の子はそんな恐ろしいことをしてる男の人に何も言わない。
何、これ。
映画の撮影?ドッキリ?
男の人が一度私に目をやって、それから手元にある拳銃を見る。

ズドン

私じゃなかった。
運転手のおじさんっぽい人が、撃たれた。
・・・・・次は、私?




近づいてくる。
来ないで。私に近づかないでよ。
ねえ、何が目的なの?
私、殺されるほど悪いことした?バスに乗ってる人たち、あんたらの気に触るようなことした?

「成仏してくれ」

そう言って、男の人は私の額に銃口を合わせた。
・・・成仏?何言ってんのこの人。
頭イっちゃってる??
・・・・・・・死にたくない!!!

私は、一瞬の隙をついて男の人の脇をすり抜けた。
わかってる、無駄な時間稼ぎだって。
それでも、ほんの少しでいいから、長く生きていたい。
男の人もまさか逃げようとするとは思わなかったらしくて、ちょっと驚いてたみたい。

私は通路に立った。
血まみれの死体なんて見たくなかったけど、ある程度気持ち悪い光景は覚悟してた。
・・・・だから、拍子抜けした。
何も無いんだもの。
まるで最初からいなかったかのように、おじいさんたちも、おばさんも、誰も。
ちょっとびっくりして、さっきおばさんが座っていた席を覗き込んだ。
白い三角布しか残っていなかった。
これって、あれだよね。
よく怪談話とかにある幽霊がつけてる布。懐かしいなー、花子さんとか流行ったよ、昔。
あはは、本当これって手の込んだどっきりだったの?
もうすっごいドキドキしたよ。
で、隠しカメラはどこ?
この女の子が『ドッキリでした』とかいう看板持ってきたりするの?
あははは。
私、何かすごい嫌な予感した。
だけどやらずにはいられない。
・・・・自分の頭に、手を置いた。

被った覚えなんて無いのに、布の感触が、確かにした。
これが何だか、私わかる。
きっと、白い、三角布。





「・・・・ねぇ」
「何じゃ?」

女の子は相変わらずドラ焼き食べてるし。
でっかいわねー。どこで買ったのかしら。
・・ううん、今はそれどころじゃないよね。


「私たち、いつ死んじゃってたの?」
「もう五年ぐらい前じゃったかのぉ。上り坂のカーブで、対向車のトラックと
 衝突してしもうたらしい。わしも詳しい資料は面倒で読んでこんかった」
「・・・・そっかー。そんなに、経ってたんだ」

男の人がまた近づいてくる。
何よ、成仏させるって拳銃で撃つの?
もっと怖くない方法取って欲しいなー。念仏とか。
・・いや、念仏なんて耳元で唱えられても嫌ね、うざったい。


銃口が額に当てられる。
うん、もう逃げない。
逃げたってどうしようもないよね。
私、もうケイタに会えるわけでも家に帰れるわけでもないんだし。


背広のお兄さんは無表情でカチリと、引き金に指をかける。
怖い怖い。早く終わらせて。
私は眼をぎゅっと閉じて、心の中で、今更だけど色々考える。
死んだあと、どーなったんだろ。
友達泣いてくれたかな。
お母さんとか涙もろいからマジ泣きしてたんじゃないかな。
・・・・・ケイタ。

ふと、ケイタのことを考えたら、さっきバスの窓から見えた男の人が思い浮かんだ。






あ、もしかしたら、あの花束を供えてくれていたのは







ズドン







没ネタ理由:
『このジャンルって何?え、銀魂一巻の巻末読切?知るかぁ!!!』
『とっても暗い話ですね。ギャグ無ぇのか、ギャグ、ギャグ!!(病んでる)』
『こんなん書く暇あるならナルト連載とかキリリク書きなさい(本当にすみません。
 スランプなんです。ギリギリなんです。しばらくそっとしてやってください)』