3分クッキング



俺が今日、シカマルの家に来たのは偶然。
シカマルが今日は用事も無いって言ってずっと本を読んでいたのも偶然。
俺がそこで一緒に本読み始めるのは必然。
先日イルカ先生が実家から送られてきた野菜を俺におすそ分けしてきたのも偶然。
野菜嫌いの俺が家にシカマルを誘って野菜を食わせよう、って思うのは必然。
それを今日誘ったのは偶然。
そんなときにチョウジがシカマルの家を訪ねてきたのも偶然・・
俺的には野菜さえ無くなりゃいいから、大食いのチョウジも一緒に誘うのは、
必然。




「僕ナルトの家に来るの初めてだよ。よかったの?」
チョウジは流石シカマルの友達だけあって結構鋭い。
俺がなんだかんだ言って自分の家に人を入れたがらないのをちゃんとわかっている。
愛想笑いでもなんでもない普通の笑顔で応える。
「別にいいってば。それよりこっち座れって、食べ物がいっぱいあって困ってんだ」
言ってから俺は冷蔵庫に入っていたお茶菓子を出す。
ナルトがあまり洋菓子や甘すぎるものを好まないと知ってからは、
何故か和菓子を貢ぐ輩が出てきた。
最初は喜んで貰っていたが、だんだん量がエスカレートしている。
普通に食べていれば、チョウジなんか目じゃないほど太ってしまう。
・・・今考えついたが、もしかして新手の嫌がらせなのか?
「ほら、シカマルも食えってば」
シカマルの前にも和菓子を出すと、一度こちらを見てから食べ始めた。
食べる前に手を合わせることも忘れていない。意外に礼儀正しいんだよ、こいつ。
「今日はさー、野菜ばっかじゃ味気ないから水炊きにして食うつもりだけど、
 別にいいよな?」
「うん、全然かまわないよ。僕もお昼作るの手伝おうか?」
シカマルよりも後に和菓子を食べ始めたチョウジは、
シカマルよりも先に食べ終わってナルトに手伝いを申し出た。
「あ、マジで?じゃあさ、あの棚のどっかにポン酢あるんだけど、探してくんない?
 ちょっとごたごたしてて探しにくいけど」
「ん、わかった」
チョウジが棚を漁り始めたところで、シカマルが菓子を食べ終わり立ち上がった。
その時、ドアがノックされる音が聴こえた。
俺はシカマルに「皿洗っといて」と適当にお願いして玄関に出る。
自分に危害を加えるつもりの人間が、今までドアをノックしてきたことはなかったので
大して警戒せずに俺はドアを開けた。
「はい、どちらさまー」
「今日って任務ないんでしょー、コノ」
バタンッ
俺は、勢いよくドアを閉めた。
その音に驚いたチョウジが、棚から目を離してこちらを見る。
「あれ、今カカシ先生の声してなかった?」
「気のせいだってば」
カカシが俺の家に遊びに来るほど仲がよいとは誤解されたくなかった。
ってかあのショタコン上忍が何も知らないチョウジにあることないこと
吹き込むに違いないので、会わせたくなかった。
何よりあのバカ、俺のことを『コノト』、偽名で呼びかけようとしやがった。
「そう・・」
再び棚に目を戻したチョウジ。
しかし、しつこくドアをノックする音が無言の室内に響き渡る。
「ねえ、出なくていいの?」
「いいんだって、これ新聞の勧誘なんだ。しつこいのなんの・・・」
俺はシカマルに目で訴えかける。
アイコンタクトが通じたのか、シカマルはチョウジに気づかれないよう
そっと窓から抜け出した。
『っつわっ!!あー、びっくりした、カノコ??って・・あーーーっ!』
ドアの外から会話が僅かに漏れていたが、それもすぐに無くなった。
とりあえずドアの前に死体さえ放置しなければ、
シカマル・・いや、カノコがカカシにどんな扱いをしようと文句は言わない。
だがシカマルはすぐに同じ窓から帰ってきた。

「ナルトー、ポン酢あったよ。はい」

チョウジが一本の瓶を机に置いた。
「サンキュ。じゃあ早速野菜切るってば!」
「鶏肉も入れなきゃ」
わいわいと料理話に盛り上がってきた二人の背後のベランダから、
ボロボロになったカカシをシカマルは見つけてしまった。
二人が、いや、チョウジが気づく前にシカマルは窓を開けた。
だがカカシが何かを言う前にベランダ(四階)から突き落とし、
素早くカーテンを閉めた。
その手際のよさと言ったら、鮮やかとしか言いようが無い。
「あれ、なんでカーテン閉めちゃうの?」
「あー・・なんか気持ち悪い虫がびっしりついてる木を見つけちまってよ」
チョウジは「そりゃ、嫌だね」とのんびり同調したが、
ナルトは何かを感じ取ったらしく、神妙な顔でシカマルを見ていた。

具材を切って、鍋に入れたところでチョウジに火加減を見るよう頼んだ。
ナルトはシカマルに声を出さずに喋った。
『シカマル、あいつ・・いるよな』
『気配の位置から察するに・・隣の空き部屋?』
ストーカーめ・・。
シカマルが部屋を出ようとするとナルトが押しとどめた。
・・こうなったら、俺直々に追い返してやる。
「あ!このポン酢賞味期限切れてるってば!!」
「ったく、何やってんだよおめー」
「ちょっと急いで買ってくる。チョウジ、ごめんな!探してくれたのに・・」
「いいよー。それより早く行ってきなって、できちゃうよ?」
シカマルと頷きあい、ナルトはダッシュでドアを開けて外に出る。
だが、階段を下りるわけでもなく、向かったのは隣の部屋。
ノックするまでもなく、カカシはドアを開けた。
「コノトー♪あ、ごめん、ナルトだったね!」
ナルトはにっこり笑った・・・・下忍にあるまじきスピードで印を組みながら。



「ただいまー。もうできちゃった?」
「うーん、あとちょい。ちょうどいいタイミングだよ」
チョウジはかき混ぜながらナルトの方を向く。
いい匂いがする。
三枚皿を出して、器用に等分するシカマル。
水炊きだけでは昼ごはんには足りないのでは、と思ったナルトは
一応スーパーで売っていた鳥の唐揚げも買ってきていて、それも机に置かれた。
「「「いただきます」」」
やはり自分たちで作ったものは、格別美味しく感じる。
すごい勢いで食べるチョウジに少し圧倒されるナルト。
流石にシカマルは慣れている。
「そういえば、これからどうすんだ?」
「あ、僕は父さんに二時には戻るよう言われてるから、食べたら帰るよ」
時計を見ると、一時を少し過ぎている時間だった。
それからまたしばらく三人とも満足そうに食べて、綺麗に鍋の中身は無くなった。
シカマルはまだナルトの家にいることにし、チョウジだけ帰る準備を始めていた。
「あーあ、結局野菜は片付かなかったし」
ナルトはむすっとしながら言った。
結構片付きはしたが、まだダンボールに野菜が残っている。
もっと料理を用意すればよかっただろうが、それでは腹に入りきらない。
するとチョウジが笑いながらナルトに言った。
「だったら、カカシ先生呼べばよかったじゃん。喜んで食べてくれたよ、きっと」
「・・・・・・え」
「ずっと来てたでしょ?」
いや、まあ、そうなんですけど。
「チョウジ、あいついるの知ってたのか?」
「いるのは知ってたよ」
チョウジはいつもと変わらず普通に喋る。
どこまで、知っているのだろうか。
・・・というか、チョウジに気づかれないようカカシを静かに抹殺しようとした
ナルトとシカマルの努力は・・もしかして無駄だったのでは・・?
「ま、とりあえず僕帰るねー。じゃあ・・あ、ごちそーさま」
手を軽く上げてすたすたと出て行ってしまったチョウジ。
微妙な空気がナルトの家に流れていた。









凍堂 亜香利様へ 「スレナル&スレシカ&チョウジ」
え、カカシってショタコンじゃないの?
え、カカシってヘタレじゃないの?
え、チョウジってスレじゃないけど黒い性格じゃないの?
え、水炊きと唐揚げ両方とも鶏肉って微妙じゃないかって?

・・・・・・・・・・・残念!!!



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