窓から見える、薄く赤みを帯びた空。
ぬるくなった緑茶。
とりあえず置いてみた、といった感じの古いテレビ。
向かいでのほほんとテレビを見るテルマ。



『俺にとって、君が全てなんだ』


陳腐な台詞の三文ドラマ。
どこにでもある、恋愛。
面白くも何とも無いし、興味も無いが、
かといってテルマと話すようなこともなく、ただ、暇つぶしに眺める。
告白された女性の方は、断った。
最近のドラマは、安易なハッピーエンドでは視聴率を稼げないらしい。

「・・・男の人かわいそうですね」

ぼそりと、テルマの呟きが聞こえた。
どうやらちゃんとドラマを見ていたらしい。
前後関係を私は知らないが、とりあえず応える。

「そうかしら」
「えー、女の人の断り方って冷たすぎじゃないですかー」
「だって、こんないい大人が、『君が全て』よ。
 そんな簡単に自分の人生を他人に依存するって、人間として薄っぺらくない?」
「ナナさんの考え方はかなーり少数派だと思いますけどね。
 女の子はこういう熱のある告白って憧れるんもんじゃないんですか?
 もしかして、こういうドラマ、嫌いでしたか?」

極力、客として扱っている自分に気を使っているのがわかる。
同い年なのに、この如才無いところが、気に食わない。
自分の子どもっぽさを露見させるようなものなので口には出さないが。

「人によりけりね。私だって、こんな風に告白されたら流されちゃうかも、だし。
 あと、ドラマは嫌いなわけじゃないわ。気を使わなくていいわよ」
「・・すっごく矛盾してません?」
「女の子はそういうものなのよっ」

何故、こんな男と恋愛談義をしているのかはわからないが、
ふとテレビを見れば既にドラマは終わっていて。
結局、どうなったのかはわからなくなってしまった。

「あー、でも」
「何」
「その理論でいくと、僕はかなりナナさんの理想に適ってません?
 僕にとってナナさんが全てでも、全体から見れば半分ぐらいの割合ですし」


自分の理解力の範疇外のことを言われて、
きちんと頭に入るまで数秒のタイムラグ。
 







「・・・・・あんた、何言ってるかわかってる?」
「すみません。天然なのでわかりません」
「そんな自己申告するような奴が天然なわけないでしょっ!」



机の下で軽くキックすると、わざとらしく首を傾げられた。
忌々しい奴め。


「僕、あの番組好きなんで毎週見てるんです。再放送なんですよ」
「・・・・・それで」
「気になったら、気軽に来てください。
 ナナさんにぴったりのドラマみたいですから」

恋愛ドラマはそこまで好きじゃないけれど、
嫌いじゃないと言った手前、テルマの言葉がくすぐったい。
ぴったりとまで言われるほど、ロマンチックな性格では無いけれど。

「というか、何の番組だったのアレ」
「火曜サスペンス」

「よし、テルマ。自分で消えるか私に消されるか選びなさい」
「早速事件発生ですか?ナナさんもノリがいいですねー」


弁慶の泣き所を狙ったら、綺麗に避けられて足の小指を打ち付けた。
どこまで忌々しい奴なんだ、こいつ。
















時間が経つにつれ、段々天使ちゃんのキャラがわからなくなってきた。
(あの「天才は〜」発言のせいだぁぁ!!!)