子どもの相手をするのは、楽しい。
目を離すと予想もしない心臓に悪いことをすることもあるが、それが面白い。
少しずつ成長するのが目に見える時期だから、見ていて飽きない。
ビーバトルや何かを破壊する高揚感と快楽、
その欲求が彼らに接していると少しだけ収まる。
今日はビーダマンのルールを、初心者の子どもたちに教えるバイトをした。
本当に初心者で、何の問題もなく無事に終わった。
最近はダークリザードという評判の悪い組織の存在が目立っていたが、
ビーダマン施設にはその影もない。
呑み込みのよくない子どもや、やんちゃ盛りの子どもたちの相手は疲れるが、
その疲労感も悪いとは思わない。
早めに終わったので、きらきらと木漏れ日が差し込む並木道に出る。
さようなら、今日はありがとう、とそれぞれの言葉で駆けていく子どもたち。
ああ、疲れたけれどこんな日も悪くない。
そう思っていたところで、ふと、彼の存在に気づいた。
相変わらずな格好で、明るい大通りの道から外れた影の濃い場所で壁にもたれかかっていた。
大会の時もそうだったが、彼はあまり人の多いところが好きではないようだ。
だから、これは多分、珍しいことなのだろう。誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。
・・・・・・・・・・嫌でも目立つ。
じっと不躾に見ていたせいか、彼は顔を上げてこちらに視線を送り顔を歪ませる。
ついでに一言。
「醜いな」
思いもかけない言葉。
穏やかな一日の一コマが、ガラスのように簡単に壊れた。
薄っぺらな幸福に酔った振り。
この男は、いるだけでその酔いを醒まさせる。
「・・・・いきなり、脈絡もなく人に言う言葉じゃないですよね。
もしかして僕、喧嘩売られているんでしょうか・・?」
別に無視してくれても良かったのに。
ビーバトルを仕掛けてもいいが、この場では、遠慮したいところだ。
周囲を気にする自分の態度がかなりお気に召したのか、彼は珍しく笑った。
嘲笑。
「良かったな」
「・・・・何のことでしょう」
「今のおまえのソレが、望んでいた生活というものなんだろう?」
己を偽って、人目を気にし、それで成り立つ『平和』な生活。
あからさまな嫌味。
またどこか遠くてカシャンと、硝子のように何かが壊れる音。
だがそこでやっと確信する。
彼は、自分を軽蔑している。今の、この、『僕』の態度を、心の底から見下している。
「・・・・・・・ええ、そうですよ。これが僕の望む生活です」
「くくっ」
「あなたに、笑われる筋合いは無い」
同じの癖に。
誰にも愛されない、必要とされない、存在すら認識されない暗闇で生きる人間。
同類はニオイでわかる。
だからといって傷を舐めあう気も、お互いを励まし慰めあう気もない。
何より、彼が自分を嫌うように、
自分もこの男が嫌いだ。
「わかったふりは、やめてください」
「・・・・」
「似てなんか、いない。わかりたくも、わかられたくもない」
B-1クラッシュカップ決勝戦。
アレを見て、気づいた。
この男は、自分と同じなのに、違う。
その強さは、人を惹きつける。
優勝カップを破壊した彼の姿を、忘れられる者はいない。
圧倒的な存在感。
同じなのに、違う。胸にぎしりぎしりと軋みが走る。
憧れなのか純粋な嫌悪なのか、それとも恐怖か。
どちらにしろ
「あなたが、大嫌いだ」
これ以上
惹き付けないでくれ
消化不良。
基本的にテルマとコドウさんって、同じ側ですよね。
というより、反主人公サイド。(笑)
コドウさんは自分と同種の人間が楽しそうに普通の生活送ってることに無意識の嫉妬、蔑み、
逆にテルマさんはテルマさんで、独りでも強く生きてるコドウさんに嫉妬してそう。
要はお互いがお互い大嫌い。しかも、二人とも相手を羨ましがってる気持ちが根幹に。
・・・・・・そういう話を書きたかった。(本当、消化不良だね)