とある子どものとある物騒なお話
「絶対ダメ!!!」
騒がしいアカデミーのとある教室。
子供たちが各々の席に着き、和やかな雰囲気で会話をしている。
いつも教師がいる黒板の前にはいのとサクラが立って、プリントを数枚持っている。
イルカは教室の隅で壁にもたれながらそれを微笑ましげに見ている。
「これからお祭りの催し物を決めるんだけど、一応事前のアンケートで
喫茶店に決まりました」
サクラが皆に向かって話しかける。
前からその案で話が進んでいたので、子供たちに否と唱える者はいない。
「男子が女子の、女子が男子の浴衣を着てお茶菓子とか出すんだよね〜?」
前の席にいた一人の女子がいのに話しかける。
「そうそう、そういう工夫もいいかな、って思ってるの」
「はぁ〜?!聞いてねぇよ!!俺女装なんて絶対嫌だ!!!」
キバが不満そうに声を張り上げる。
確かに、そんな話は一切出ていない。
女子はどうでもよさそうだが、男子は死活問題とばかりに文句を言い始めた。
「反対の人手ぇ上げて」
いのが声を掛けると、男子だけが全員手を上げた。
「・・・半々か。ねえ、我慢してくれない?
料理係とか食材調達係とかはウェイターの格好でいいから、ね?」
「それってどれぐらいの人数なんだよ」
「んー。料理係は五人、調達係は四人ってところかしら」
合計九人。
少ない確立だが、これ以上ごり押ししてもいの達が譲歩することはないらしい。
仕方なく男子たちは自分の運を信じて、手を下ろした。
「さ、皆係りを決めるから、順番に引いてね」
「・・・負けた・・・・・」
自分の運に。
ナルトは『当たり』のくじを片手で弄びながら悔しがっているキバたちを見る。
「何でナルトは浴衣じゃないんだよ!!」
「だってー、俺ってば『当たり』なんだもん」
「シノは?」
「・・・・・」
黙って白紙のくじを差し出す。
・・・女装ね。
チョウジも白紙だったが、本人は大して気にしていないらしい。菓子を食べている。
ナルトはぐるりと教室を見渡した。
頭を抱えてうずくまっている男子は、『はずれ』と判断していいだろう。
サスケもうずくまってる。
「そういや、シカマルはどうだったんだ?」
「・・・・・・・・・はずれ」
その言葉を聞いた瞬間、ナルトはがたりと勢いよく席から立ち上がった。
「ダメだってば!!ダメ!!!絶対ダーメ!!!!!」
「「「は?」」」
「シカマル、俺のくじと交換しろっ!!ともかく交換!!!」
「だ、大丈夫か?」
ナルトの勢いに、騒がしかった教室が一気に静まり返り、彼に注目する。
「お前が女装なんて!!お願いだから、絶対やめなさい!!!」
「・・・・んぁ?」
半分眠っていたらしいシカマルは、ナルトの言葉にボケた対応をする。
「ちょっと、ナルト!そこで不正行為はやめなさいーっ!!」
「・・だって・・・・・サクラちゃん・・・」
「もう、だめなの!さっさとくじ回収するわよ!」
「・・・うぇー・・・」
何故かとっても困った顔のナルト。
キバたちは、何故そんな反応をするか、まだわからなかった。
「・・・・・・・・シノ、お前って浴衣、似合うようで似合わないな」
「・・・うるさい」
わいわいと飾りつけの準備で忙しい教室の片隅で、
シノとキバは長椅子に座り込んでお互いを見ていた。
チョウジはいのたちに付き合わされて手伝いをしている。
何だかんだで似合っていたりするので、妙な気分だ。
「サスケ、可哀想だな」
「・・・・ああ」
華美な髪飾りをつけさせられ、女子に囲まれているサスケ。
もう彼女らの熱意に半ば諦めているようだ。
そこらの女子よりよっぽど可愛らしいのが余計救われない。
・・・・・・・・・哀れだ。
「ナルトとシカマルは?」
「知らん。ナルトが匿っているんじゃないか?」
「・・そうだな。あれだけ反対してたもんな」
「「・・・・・」」
話すことも尽きて、無言になる。
女物の浴衣も大分慣れてきた。ほとんどの男は自分たちと同じような格好なのだから。
ふと、ふらふらと誰かが長椅子の端に座った。
ストレートの長い黒髪をかんざしで括り、鮮やかな若緑の浴衣は
そのすっきりとした雰囲気によく似合っていた。
・・・この状況で、この格好。
確実に男だ。わかっている、わかってはいるが。
・・・・・・・・・・綺麗だった。
サスケとは別のタイプで、むこうが人目を惹く愛らしさだとしたら、
こちらは洗練された美しさ・・とでも言うのだろうか。
うざったそうに前髪を掻き分ける仕草も、どこか品がある。
「・・・ってか、お前ら無視か?」
「・・・・・・・・やっぱりなぁ、やっぱりかよ!!!シカマル!?」
こんな長い髪の男なんてそうそういない。
簡単に条件から特定できるが、やはり信じたくは無かった。
「人間、変わるものだな・・・・」
「ほんと・・ナルトが嫌がる気持ちもわかるな」
これほどの美人、放っておかれるはずがない。
この里にも、特に上忍には変態や危険人物が多いと聞くし、
下手したら・・・・ということもありうる。
「きゃー、ちょっと、あなた誰よ!?」
「・・・いの、幼馴染の顔も忘れたか」
「ちょっとシカマルすっごい美人なんだけど!!みんなぁ〜!!!」
「わ・・・肌綺麗・・化粧化粧!!!」
「あ、おい、うぇっ・・・・・?!」
女子たちに囲まれながら拉致られたシカマル。
その光景は凄まじかった。
あの、他人にほとんど興味を示さないサスケですら、哀れんだ目で見ていた。
煩い女子たちが消え、一気に静かになった教室。
男子たちは、貴重な犠牲者に感謝の念を捧げ、口うるさい存在が消えたので
各々さぼったり眠ったりし始めた。
すると入れ替わるようにがらりと勢いよくドアが開けられる。
「シカマルこっち来てない!!??」
ナルトだった。
いつもより数倍真剣な顔で、きょろきょろと教室を見回す。
「・・・女子たちに連れて行かれた」
「・・・・・・・くそっ、遅かったか・・」
「シカマル、どしたんだ、アレ」
「元からあいつ顔はいーのっ!!ったく、アレで変な虫がついたらどーしてくれんだ」
「だから女装反対だったのか?」
「おう」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
その目は『害虫は即排除』と言わんばかりの殺気に満ち溢れていた。
二人は当日、絶対にナルトとシカマルには近づかないと心に決めた。
当日
「君、すっごい可愛くない?!俺・・・」
シカマルに話しかけた中忍A。
だが彼は自己紹介をする前に、
背後で紅茶を買出しに行こうとしているナルトにさっくり倒された。
鮮やかな手際。
あまりに鮮やか過ぎてシカマルとナルト以外誰も気づいていなかった。
「あれ、いきなり倒れた??」
「暑いからねぇ・・・・救護室に運ばないと。先生〜」
「君・・・・ぐはっ!!」
「んー?」
「ありゃ、まーた発生?ここそんなに暑い?」
「いや。そこまで暑くないと思うけど・・・・」
「とりあえず運びましょう」
だが、シカマルに近づく輩は多いわけで。
「ねぇ・・ごぎゃば!!」
「あの、がふっ・・・」
「・・・・・・」(無言で倒れる)
流石に何度もこんなことがあると、
のほほんとした喫茶店も殺伐とした雰囲気がたちこめてくる。
次のお客は大丈夫だろうか・・などと賭けをする子どももいるが。
「次のお客は倒れると思うか?」
「ふむ・・・多分、そうなると思うが」
キバとシノがため息をつきながら入り口で話をしていると、
男二人がこちらに近づいてくるのがわかった。
「いらっしゃいませー・・・・・・って」
「・・・上忍・・・・・」
「うわ、ポスターで見たけど本当可愛いじゃん!!」
「おい・・・その子マジで嫌な顔してるぞ」
「・・・そうなの?」
「はい、すっごく」
「ほらー、そんなことないって言ってるじゃん!」
髭熊・・・アスマはシカマルに無言で謝った。
気晴らしにもなるかもと、カカシを連れてきたがために
随分とアカデミー生に迷惑をかけている。情けない。
カカシはいくらこちらが止めても、相変わらずセクハラ一歩手前の距離で
子どもに迫っているし・・・・・・本当に情けない。
「ねえねえ、君名前は〜?折角だし一緒に屋台巡らない?」
「名前は言う義理がありません。仕事中なので行きません」
変態上忍として、はたけカカシは木の葉の里に名を馳せている。
厄介なものに目を付けられたと、シカマルは内心舌打ちをした。
連れの猿飛アスマはストッパーとしてはあまり役に立たない。
ウェイターのナルトも、数回カカシに攻撃を仕掛けているのだが、
流石腐っても上忍。笑顔でかわしている。
「ってか、男の子なの?」
「そうです」
「信じらんないー・・・!!」
ぽんぽん、と浴衣から胸を叩いて本当に男だと実感したらしく、
カカシは落ち込んだように肩をおとしながらため息一つ。
が、すぐにまた笑顔で質問攻めを繰り返す。
「おま、男だからまだしも、そういう言動はやめろっ!!」
「何だよアスマ・・って、君、何?」
アスマと話をしていたカカシの肩を誰かが叩く。
振り向いてみると、そこにはさっきから隠れて攻撃を繰り返していた子どもがいた。
その子どもは、可愛らしい笑顔で・・・だがその額に青筋がたっていた。
「お客様。ここはお触りパブではないので、
店員にそういったことをなさるのはやめてください。
ってかさっさと飯食って出てってください」
「えー、俺この子ともっとおしゃべりしたいな。
店の迷惑ならちょっとこの子貸してくれないかな〜?」
態度からして、仕事でというよりも
個人的にこのウェイターの子どもは警告しているのだと感じたカカシは、
あえて挑発的な言葉を選ぶ。
案の定、目に見えて彼の態度は変わった。
「そういうお客様にはちょっと強硬手段でいかせてもらいます。
ってかシカマルにセクハラなんぞ誰が許してやるかぁぁぁ!!」
ナルトは、背後に隠し持っていた釘バットで
勢いよくカカシに迫る。
当然カカシも避けて応戦しようと思ったのだが、何故か動けない。
ちろりと目を動かすと、隣に座っていた少年の影が、自分にくっついている。
少年は、にこにこと笑いながらカカシを見て
「店の警告は受け入れてくださいね」と呟いていた。
・・・・・しまった、この子、奈良家の子どもか・・・
カカシがそう思ったときには既に遅く、バットが目前に迫っていた。
ごきゅり
嫌な音が静かな喫茶店に響いた。
そして数秒後、大音量の悲鳴が起こった。
「よくやったナルト!!」
「シカマル・・俺やったよ、ついにやり遂げたよ!」
シカマルと嬉しそうにがばりと抱き合っているナルトはまだ知らない。
釘バットの餌食にしたこの男が、
将来自分の担当上忍になることを・・・・
銀月彼方様へ 「スレナルスレシカで、シカアイドルでナルト嫉妬ネタ」
土下座するしかありません。
でも、リクエストありがとうございました!!!!
NARUTO→