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雲ひとつ無い空、少し暑いが木陰に入れば涼しいので

シカマルは森の中で木の根元に腰を下ろし持ってきた本を読んでいた。

今日は珍しくサコウが帰ってきたので休みをもらえたのだ。

サラサラと風に揺れる木々の音が聞こえ、読書にはなかなか快適な空間だ。

『シカマル』

声が聞こえた方を見やると小さな鳥がじっとこちらを見ている。

『今日の夜ごろ抜け出せるか?

 九時に火影の屋敷の門に来てくれ。勿論変化してな』

鳥は一方的に告げると返事も聞かず飛び去っていった。

シカマルは浅くため息をついた。

「拒否権ねーじゃん・・・・ナルト」







予定通り分身を残し静かに家を出た。

特書館の時と同じ変化をして街中を歩くとたまに忍びが振り返ってくるが気にしなかった。

時折挨拶してくる常連も無難に避けて門にたどり着くと見覚えのある金髪の男がいた。

「よ、カノコ。約束どおり来てくれたな。こっちだ」

そう言って門の中に入っていく。

途中、思い出したように懐から狐面を出して身に着けた。

黙って付いて行くと頭の固そうな男がやってきた。

「コノト、部外者を入れてはいけないことぐらいわかっているだろう。誰だこいつは?」

じろじろと不躾な視線を送る男をカノコは睨みつけた。

男はコノトに援護を頼むような顔で見るが、当のコノトも冷たい口調で言い放つ。

「お前には関係ない。こいつは俺の相棒の男だ。火影様も認めてくださっている、な」

眼を見開いて男はコノトとカノコの顔を見比べた。

コノトの声が真剣で、冗談でないとわかった男は足早に去っていった。

「・・・・ありゃ何だ」

何も無かったかのように歩き出すコノトに思わず質問してしまう。

「うーん、俺のこと嫌いな上のジジイどもの下っ端。

 これでお前のことは俺の相棒として認識されたな、かわいそーに」

「は?」

「だから、もう明日にはお前の存在はコノトをよく思わない奴らには知れ渡るってこと。

 っても火影のお墨付きって脅したから上の連中にしか伝わらないな、多分」

喋りながらたどり着いたそこそこ大きな倉の扉を開ける。

大きく錆び一つ無い鉄の扉は音も無くすっと開いた。

「・・・ところで、ここは何なんだ?」

「暗部の支給品を保管してあるところだ。おまえのを選ばないといけねぇだろ?」

そう・・自分はごく最近、半ば騙されて暗部に入隊させられたのだ。

倉に入るとコノトは壁にあるスイッチを入れた。

カノコは暗闇がいきなり明るくなったので思わず目がくらんだが、慣れてみると

なかなか広く大きい倉だとわかった。

「服はいいだろ、道具も一式揃ったのがあるが・・クナイとかお前どうしてる?」

クナイや手裏剣といった武器には人それぞれこだわりがある。

軽いものや刃を潰したもの、名門一族の特性を活かすための専用のものもある。

投げ渡された暗部の服に腕を通したシカマルは少し考えたがすぐに決めた。

「普通でいいぜ、面倒だし。でもこれとこれは入れといて・・あー、そっちも取ってくれ」

何だかんだで先ほどコノトから受け取った暗部服に武器を仕込んでいく。

「これでいい」

「ん?ここ随分空けてあるな・・薬でも入れるのか?」

「いや、まー似たようなもんだ。他はいいのか?」

コノトはにっと笑って首を横に振った。

「まだ、とっておきのものが残ってる」

そう言って倉の奥を進み、目立たないよう隠されている扉を開いた。

そこは小さい物置のような所だったが、床には何も置かれていなかったので広く感じた。

「面か・・」

「そう!俺は狐のだけどな。一緒に組むことになるから同じのじゃ駄目だ」

カノコは軽く頷くと面の掛けられた壁を見る。

面は一品一品手作りで、芸術品としての価値もありそうなぐらい良くできたものだ。

種類も様々あり、動物を初め自然や植物を象ったものもあった。

密かにカノコが感動しているとコノトが肩を叩いた。

「これなんか良くないか?ぴったりだと思う」

そう言って手渡したのは牡鹿の面であった。

だが他の面と明らかに材質が違う。悪い意味ではない。

ここにあるものとは思えないほどよくできていたがそれにする気はなかった。

何故なら

「こんなでっけぇ角があったら目立つだろうが!!」

「ぎゃははは!!!ぜってぇ似合う!もう、それに決めろよ!?」

腹を抱えながらコノトは笑っている。

その面はとてもリアルなで間近で見なければ剥製の生首で通じるようなものだ。・・・角は本物のようだし。

「ってかこれ・・・もしかして」

「おう、俺がわざわざ特注した」

「んなに手間かけるんだったらお前が被れ!!」

「嫌に決まってんだろ!俺狐の面気に入ってるもん!!!」

「だったら特注すんなよ!」

ひとしきり怒鳴りあい、結局面はコノトがお持ち帰りとなった。

再びカノコが面を見始めたのをじっと見守っていたが、しばらくしてため息を付いた。

「はー・・・・・・・カノコ、そんなにここの面が気に入ったのか?」

「おまえなぁ、これ滅茶苦茶いいもんだぞ。質でも結構いい値で・・」

「いい面だってことはわかってる。でも長すぎだ、早くしろー」

カノコは悪ぃ、と呟いて他の面を見て回る。

それに業を煮やしたコノトは提案した。

「じゃあ、この部屋の真ん中に立って目をつぶりながら1つ取れよ。それでいいじゃん」

「んー・・・・・・・わかった」

部屋の真ん中に立ち、目をつぶったカノコを確認したコノトはこっそり

先ほどの鹿の仮面を壁に掛けようとした。

「言っとくが、あの鹿のやつ入れるんじゃねぇぞ」

「・・・・・・・・・・目開けてんのか?」

「てめぇの行動パターンぐらい読める」

コノトは諦めて鹿の面を自分の横に置いた。

慎重にカノコは手を前に突き出し歩き始めた。

うろつくと思ったが、意外なことに真っ直ぐ歩き少し上にあった面を取った。

あまりにあっさりとしていたのでコノトは問う。

「もともと決めてたのか?」

「いや、なんとなくこれが取って欲しそうな気配がして」

よくわからない理屈だが、何故だかすんなりと納得できた。

年月の経ったものや思い入れのあるものは力が宿る。

おそらくこの面も・・。

「・・・・ってかこれ何?」

その面は一見普通の動物の面であったが人の顔をモチーフにしてあるものだった。

なかなかの美青年で、たれた犬耳が何故だか妙に合っている。

「誰かを似せて作ったんじゃないか?」

「・・・ああ、誰だろ。見たことある気がするんだけどな」

ナルトは首を傾げるがどうしても思い出せない。

「確かに・・まあ火影様にでも聞けばわかるかもしれないし、もういいんだろ?出ようぜ」

「おう、次の任務のときでも聞いてみるか」









「カ、カノコ!・・・その面は」

二人に任務が入ったとき、早速面をつけて行ったカノコを見た三代目は思わず声を上げた。

「じーちゃんなんか知ってるの?これ誰なのか教えてよ」

コノトが嬉しそうな顔で近づき、詰め寄ってきた。

しかし、あのナルト馬鹿の三代目は冷や汗を流しながらも手で追い払うしぐさをする。

「知らん知らん!!あー、もうさっさと任務に行って来い!!!」

そう言って追い出されてしまった。

コノトは眉をしかめながら閉ざされた扉を軽くにらみつけた。

「何か隠してるのがバレバレじゃん。じーちゃんと関係あるみたいだな」

「おい、三代目にだって隠したいことの一つや二つあるだろ。そっとしておいてやれよ」

コノトは扉からカノコに目を移した。

もう不貞腐れてはいなかったがつまらなそうな表情をしていた。

「ま、そうだな。・・・・・・そういえば今日カノコの初任務じゃん!けけ、ビビってドジんなよ?」

「誰がドジるって?てめぇの方こそいつもと勝手が違うから緊張してんじゃねーの?」

二人の間に一瞬火花が散った。

コノトがぼそっと声を出した。

「・・今日の任務は?」

「木の葉から密書を奪って逃亡した他国の忍び6人と抜け忍1人の掃除と密書の奪回」

「7人か・・奇数で丁度良いな」

「ああ」

「「勝負だ!!!」」

叫んだ瞬間二人の姿は目にも留まらぬ速さで消えた。









「やあ、火影様。木の葉も大分落ち着いてきたね」

「サコウ!!おぬし今まで何処に行っておったんだ!?」

「色々ね・・例の子はどうしている?」

「あぁ、まだ1年も経っていないからな。わしの信の置けるものたちに世話を手伝ってもらいながらやっとるよ」

「そうか。まぁそれが一番いいかもしれんな」

「うむ・・・ところでその手に持っている木材は何だ?」

「これか?神木の一部だ、貰ったんだよ。これで九尾の面を作ろうと思うんだ」

「追悼か・・」

「死んではいない。誰かが、私の作った狐面を見てこの隠された本当の真実を調べるかもしれないだろ。

 ・・・・・里がいくら隠そうとも私は何かに示すつもりだよ、あの狐は里の傲慢さによる犠牲者だと」

別に猿を責めてるわけじゃないからな、と苦笑いしながらサコウは付け足した。

「そうか、反対はせん・・・・結構大きいな、その神木。わしにも半分くれんか?」

「いいけど、何の面を作るんだ?狐は私が作るから駄目だぞ?」

「・・おまえの面じゃ。犠牲者は狐だけではないからの」

その言葉を聞いて、理解するのに数秒を要した。

サコウが虚をつかれて呆然と立っているので、三代目は神木を取り上げて家に入ろうとした。

「あ、ちょっと待て!何勝手に俺の面を作ろうとしてんだ!!猿!」

「ふん、やっとその馬鹿丁寧な仮面が剥がれ落ちおった!というかそんな古いあだ名で呼ぶな!」

サコウは狐面を、三代目は親友の面を作った。

それらが、後に里一番の実力者と切れ者の愛用の暗部面となることは、まだ誰も知らない
























つまり、シカマルのあのお面はサコウがモチーフ。