もうすぐ期末試験ということで、遊戯たちは土曜から日曜にかけて
泊りがけで勉強内なるものを獏良の家で開くことにした。
だが、遊戯たちは健全なる高校生であり、デュエリストであったりゲーマーだったり。
泊まりの荷物は教科書や参考書よりもゲームの道具が割合を占めている。
夜通しでゲーム大会でも開けそうな量だ。
・・といっても杏子は女の子、御伽は過保護な父親がいるため
夕方には帰ることになっている。

「おじゃましまーす!」
五人は午前中に一旦集まって、そろって獏良の家にやってきた。
ドアを開けて中に入ると、獏良は笑いながらリビングに手招きした。
流石に六人分の椅子や机は無かったらしく、高さの低い机を
二つ並べて、その周りに座布団が置いてある。
適当に五人が座ると獏良は冷蔵庫から麦茶を持ってくると言って台所に出た。
「へー、一人暮らしの割に物があるね」
家に初めて来た御伽が物珍しそうに部屋を見回す。
「そうだな・・俺たちが来たときはこんなに多くなかったけど」
城乃内がそう言いながら自分の近くにあった黒い箱を持ち上げる。
それを本田が受け取って蓋を開けた。
・・・・・・・・・・・・・スタンガンと汚れたナイフ。
汚れた、というより妙にぬめった感がある。
「これ・・・もしかして血?」
杏子が城乃内と本田に問いかける。
そういうものに見慣れている二人は顔を見合わせて、戸惑いがちに頷いた。
あの爽やかな彼にはとても似つかわしくないものだ。
場に妙な沈黙が流れる。
「あー、それちゃんと戻しといてね」
獏良が間の抜けた声で沈黙を破る。
両手に六人分の麦茶を乗せたお盆を持って。
「・・・獏良、これお前の?」
「違うよ、あいつの」
『あいつ』が誰のことを指すのか、それはこの場にいた全員がわかっていた。
「血、ついてるよなー・・」
「全く、何やってるか知らないけど僕の身体を巻き込まないでほしいよ」
のほほんと喋る獏良。大して怒っているようには見えない。
「じゃあ、これも?」
杏子が煙草の箱と灰皿を机に置いた。
獏良はギギギ、と首を不自然に動かす。
「それ、どこにあった?」
「あの下よ」
この机を置くために、おそらく移動させられたソファを指差す。
「・・・・・・」
しばし無言でそれを見つめていた獏良は、
ダッシュで自分の部屋に向かった。なかなか良い瞬発力だ。
ガチャガチャと壁の向こうから音が聴こえる。
ぁんのリング!!!どこ行きやがった!!!!
ガスッと物を蹴り上げる音の後に、獏良は出てきた。
顔はいつもと同じ人好きのする顔だが、行動の一つ一つに粗雑さが目立つ。
おとなしいタイプの人間はキレると怖いとよくいう(実際獏良はキレると怖いが)、
獏良がこんな風に感情を露にして怒るのは珍しい。
「・・煙草のこと?」
「そう!全く、あれだけ吸うなって言ってるのに性懲りも無く・・」
いや、煙草よりももっと突っ込むべきものがいっぱいあるでしょうが!
「あ、あれはいいのか?」
本田が持っていた黒い箱を指差す。
獏良はきょとんとした顔になった。
「だって、あれは僕の身体に直接害はないでしょ?」
そういう問題なんだ・・・、とこの場にいた全員が脱力して肩を落とした。
人畜無害で常識人に見えるこの友人が、実はものすごい
非常識な人間だと認識を改めなければいけないらしい。
「さ、あんまり時間はないんだから!勉強勉強!!」
パンと手を叩いて筆記用具を出してきた獏良。
これ以上会話をしても無駄だろう、と判断した遊戯たちも
苦笑しながら教科書を出した。




・・・・・結局勉強会はゲーム大会に変わってしまったことは言うまでも無い。
ついでに言うと、隠れていた千年リングと先年パズルが
闇のゲームを始めてしまい絶叫と悲鳴の響く夜となったことも記しておく・・