「じゃあ問題。3mの縄梯子を垂らした船があります。
 そのはしごは1m分海に浸かっていて、水位は30分で50センチ上がる。
 そうすると二時間後には梯子は何m海に浸かっていることになる?」
アスマとカカシが下忍たちの任務の報告書を提出し、これから
飲みに行くかという展開になっていたとき、ナルトの声が聞こえた。
カカシが素早く前に移動して声のほうを窺う。
ナルトはシカマルと花壇の縁に座り込んでいた。
ドベ同士気が合うのか、この二人はよく一緒にいるのを見かける。
アカデミーの教師の報告書にも確かそんな記述があった・・・気がする。
「1m。船は浮かんでいるから浸かる長さは変わんねぇよ」
「ピンポーン。はい、今度はシカマル」
シカマルはしばし考え込むように空を見上げ、
問題を思いついたのかナルトに眼を向ける。その間3秒。
「・・・木の葉隠れの里と砂隠れの里の境で旅人一行が忍者に襲われた。
 生存者はどっちの里に埋葬される?」
「生存者は生きてるから、埋められたりしない。・・ひっかけにはかからねぇから」
さっきから二人はイジワル問題と呼ばれる類の問題を出し合っているようだ。
カカシは面白そうに二人に声を掛けた。
「よお、ナルトにシカマル」
「あー、こんにちはだってばカカシ先生!」
「どーも。ん、アスマも一緒か」
「ああ」
「二人ともなんか面白そうなことやってるね〜」
「聞いてたってば?先生にはちょっと難しいってばよ!」
きしし、と白い歯を見せて笑うナルト。
「ん〜?でも俺上忍だからあんな問題軽い軽い」
まあ、確かにあれぐらいの問題は解けなくはないだろう。
だがナルトはそれを意地と取ったらしい。
「本当!?じゃあ、俺たちの問題解ける?」
「解けるよー、言ってみな。解けなかったら夕飯奢ってあげるよ」
キラッ、とナルトとシカマルの眼が光ったのをアスマは見てしまった。
しかしカカシはそのことには全く気づいていなかった。
「ある物凄い頭の良い男たちが三人いたんだってば」
「うんうん」
カカシが相槌を打つと、シカマルが言葉を続けた。
「三人の額には本人が見えないように、黒か白・・どちらかのシールが張られている。
 別の男が『あなたの目の前にいる人のうち、黒いシールを額につけた人が
 一人でもいるなら手を上げてください』と言った」
「結果、三人全員が手を上げたんだってば。
更に男は続けて『それでは自分の額のシールが
 何色か答えて下さい」と尋ねたんだ。三人は最初誰も何も答えなかったけど、
 ずーっと時間が経ってある男が見事正解を言い当てたってば」
「じゃあ問題。その男が答えた色と、正解に至る根拠を述べてください」
先ほどまでお互いが出し合っていたひっかけ問題とは違い、
これは明らかに論理的な推理が必要な問題だった。
「おいおい、今までのと問題の質が違くねーか?」
「ご飯がかかってるってば。難易度は上げて当然!」
「一応制限時間は1分ってことで」
「夕飯、一楽じゃなくってもうちょい高いとこにしてくれってば」
持っていた時計を見せて笑う子どもたち。
カカシは首をひねりながら答えを出そうとした。


「じゃあ、先生行こうってば!!」
カカシはシカマルと共に前を歩くナルトの背から悪魔の羽が見えた気がした。
答えられなくとも、二人分ぐらいの食事代を出せないほど貧乏ではないカカシ。
だが指定された店は、この二人が行くには十年早そうなかなりの高級中華店。
そこはちょっと・・・、と止めようとしたが、子どもたちが心底悲しそうに
上目遣いで迫ってきては、否とは言えない。
アスマが「いや、ナルトは知らんがシカマルのあれはかなり嘘っぽいぞ・・」と
ツッコんだがあえてカカシは無視した。
「あ、ナルトにシカマル。それに先生たちも・・どうしたの?」
「おーチョウジ!これから先生たちに夕飯奢ってもらうんだってば!」
「いいなー」
「食事は人数が多いほうが楽しいってば!・・・ね、先生?」
「え、いや、ちょっと・・・・・・」
「・・・・・カカシ・・・先生?」
裏切られたかのように傷ついた顔をするナルト。
「チョウジ君、一緒に食事どうだい?!」
「え、いいんですか?」
「いいんだよいいんだよー。子どもは遠慮しないでさっ!」
渇いた笑い(口元しか笑えていない)でチョウジを引き寄せるカカシ。
そんなカカシにアスマがこっそり耳打ちする。
「チョウジは、本当によく食うぞ」
「アスマ金貸して」
「・・・・・足りるかどうか怪しい」
「・・・・・・・・こうなったら紅でもガイでも呼んできてよ」
「わかった、先行ってろ」
カカシが頷いて歩いていくのを見送ると、側にいたナルトと目が合った。
「・・そういえば、あの問題の答えは何だったんだ?」
「アスマ先生、そういうのって自分で考えなきゃいけないってば」
「手厳しいな」
「2分で答えわかったら・・・」
「いや、賭けはしない。おまえらには勝てそうな気がしない」
「・・そっか。じゃあ、先行ってるってば!!」
元気に手を振って走り去っていくナルトを見て、アスマは深く息を吐いた。
相手を選ばず誰でもいいから早めに店に連れて行ってやろう。
悪ガキ三人に、カカシは一人でどれだけ気力が保てるだろうか。






答えは黒。(三人全員黒)
理屈↓
全員が手を上げるということは黒が最低二人いるということです。
三人をA,B,Cとして、白(A)が一人いたと仮定します。
(B)からすれば、白(A)と黒(C)が目の前にいるわけです。
もし自分(B)の色が白であると、
黒(C)は目の前には白(A,B)しかいないとなるので手を上げられなくなります。
ということは、自分(B)の色は黒であることが簡単にわかります。
それは相手の黒(C)もすぐに同じことを考えられるはずです。
しかし誰も答えをすぐには出せなかった。→つまり明確な判断基準(白)がない
っつうことで全員黒だということが見出せる。
・・・・結構前に読んだ本より、です。
ちょっと自己解釈な部分があるかも。でも読み直すの面倒なので無視。
こんな説明ではわかりにくいだろうということは百も承知です。(タチ悪っ)