「だから、知らねぇって言ってるだろ?」
「ほ、本当か?隠してたりしたら容赦しねーぞ!」
「・・あー、だから、本当に知らないんだよ」
アスマは目の前にいる勝気な少年の頭をぽんぽんと撫でた。
「頭撫でるなー!!」
「悪ぃ」
何故か、朝っぱらから少年二人に金髪の子どもの所在を聞かれた。
勿論知るはずもないのでそう答えたのだが、
なかなか納得してくれない・・・この少年が。
もう一人は呑気にぼりぼりとスナック菓子を食べている。
「ワン!」
「どうした赤丸・・ああ、ほらおじさん、あんな背格好で金髪な奴探してるんだ」
「ほー・・・・ありゃシカマルじゃねぇか」
最近はあまり明るいうちは町に来ない彼が、こんな朝っぱらから・・珍しい。
しかも連れがいるとは。見覚えの無い子どもだ。手まで繋いでいる。
猛スピードで走っているせいか、少年が石に躓いて大きく転んだ。
被っていた帽子が落ちる。
見事な金髪。
「ほら、そうそうあれぐらいの髪型で金髪で・・・ってアレじゃん!!」
ちょっと阿呆っぽい少年(失礼)が、そう言って戦闘の構えを取る。
もう一人の少年も菓子を食べるのをやめ、隣に立つ。
「アスマー!そいつ、海賊の仲間なんだ!!」
「何?」
にわかには信じがたい、が、シカマルが嘘をつくほうが信じられない。
「こいつのことを狙ってるんだ!!」
金髪の少年がこちらを怯えるような眼で見る。
「あ、シノにサスケ・・よしっ、挟み撃ちだ!!」
「こーら、あの金髪怖がってるじゃねーか。遊びはもうやめろっ」
アスマが手前にいた少年二人を抑える。
「ほら、シカマルたち家に入っちまえ」
「サンキュ、アスマ」
「・・・ごめんなさい」
金髪は申し訳なさそうに謝って脇を通った。礼儀正しいなぁ。
「ちょー!逃げちまう、おっさん放せよ!!」
後方のこいつらの仲間らしき少年たちが来たところで、
アスマは抑えていた少年たちを放してやった。
「ほら、どけよおっさん。俺たちもうおっさんに用無いから!」
「どいてくれませんか?」
「うーん・・子どもの遊びならどいてもいいんだが、
 シカマルがそんなことで俺に助けを求めるはずないしな。どけん」
「じゃあ実力行使で・・」
「あぁ?てめぇらがか?」
ちょっと凄んでアスマが見下ろすと、うっとたじろぐ少年たち。

「すみません、イルカさん。裏口から出てきます」
「別に、それぐらいならお安いご用さ・・・シカマルもいつのまにか友達を・・」
「あー・・・友達?」
シカマルが尋ねると、ナルトもしばらく考えて首を振った。
「ここは恋人ってのが妥当かと」
「何でだよっ!」
「いや、結構俺たちの出会いって運命的じゃない?」
「バカップルならさっさと裏口から出てって」
イルカの子どもが、そう言って裏口を指差した。
「ちょ、サクラ!・・・まあいい、ほら、いくぞナルト!」
「ちゃんと守ってやれよー!」
「イルカさんも余計なお世話です!」

「・・・なぁ、あの人達とおまえの関係って・・・・」
「イルカさんは町の小学校の教師をやっててな、俺も一時期教わってたんだ。
 アスマは俺の親父の友人だった人だ。サクラは・・まあ、あの一家の養女だ」
「すごい濃い家族じゃない?」
「・・・・・・わからなくもねぇよ」

「だからー、通してくれって」
「いいや、駄目だ」
「こら、アスマさん何やってるんですか。子どもを苛めちゃいけないですよ!」
「イルカ・・・いや、こいつら海賊らしい」
家から出てきたイルカは子どもたちを見る。
「ふむ・・・よし、お兄さんがもっと楽しいとこに連れてってやるから、ついて来い」
「「「「は?」」」」
「海賊なんていうのはヤクザな仕事だからな。
 今からちゃんと勉強しとけばこの町でもなんとか働き口が見つかるさ。
 なんなら俺が面倒みてやってもいいし。さ、小学校行こうか!」
「・・・・イルカ」
「何ですか?」
「あの、え、うぇ?」
呆れるアスマ。笑顔のイルカ。状況についていけない子どもたち。
「くぉらてめーら何やってんだ!!!」
「「ママ・・・!!」」
ちなみに、ママと言ったのは犬を連れた少年とスナック菓子を食べていた少年だけであった。
「ったく使えないねぇ、ほら乗りな。あいつらは裏口から逃げちまったよ!」
いきなり現れた女性は、子どもたちを車に乗せそして去っていった。
それはさながら悪い女王と生贄の子どもたち・・・・
「あ、小学校!!」
イルカがそう叫んで呼び止めようとしたときには、もういなくなっていた。