くるくるくるくる。
筆を指先で回す。
目の前には山積みにされた書類。
窓を覗くと、晴れやかに澄み切った青空が広がっている。
視線を戻すと、やはり書類の山。
「………今日はアカデミーで演習があるって言ってたな」
確か、校外実習で演習林行き。
いのが引率をすると飲み屋で聞いた気がする。
今日の予定が決まった。
もう一度、書類を見やる。
どうせ今日やらなくとも困ることはないだろう。
いざとなれば優秀な補佐官に手伝わせればいい。
扉には見張りがついているので窓枠に手をかける。
が、何故か鍵がかかっている。
しかも内側からじゃない、外側から。
シカマルの仕業だな、と心の中で舌打ちをして、クナイを握る。
ガギッ
思いっきり振り下ろしても、傷一つつかない窓。
この前壊したときに立て替えたと聞いたが、
ここまで特殊装甲を施すとは思わなかった。
仕方なくクナイを戻す。
あまり使いたくなかったが、(自分的には)緊急事態だ。
両手にチャクラを集中させ、高圧の回転を生じさせる。
高らかに必殺技を叫ぶ。
「らせーん……………幻術?」
螺旋丸を発動させる前に、いきなり周囲が暗転した。
自分の手すら見えないほどの濃い闇。
幻術だろうが、もしかしたら精神に直接作用するものかもしれない。
どちらにしろ、火影の執務室にこんなものを仕掛ける輩はたった一人。
「……シカマルの野郎」
恐らく、この術式が発動したことは術者にも伝わっているだろう。
あまり手間をかければ、それだけ奴を喜ばせてしまう。
だから
「即効、壊す!」
「奈良補佐官。六代目がまた逃亡しました!!」
「知ってる。今日は八分………ちっ、また攻略縮められた」
「いや、そういう問題じゃないんですが」
忌々しげに呟かれた言葉に、報告に来た上忍は胃を押さえた。
シカマルは気にした様子も無く、資料室から古ぼけた巻物を数本懐に入れた。
「まさかこんなに早く、この術を使う機会がくるとはな」
「……六代目火影様ですが」
「大丈夫だって。あいつなら死なないから」
あなた方を止める私たちが危ないんですよ!
そう言いたい気持ちを、上忍はぐっと押さえた。
何だかんだで、この補佐官も六代目と似たもの同士。
止めろと言って素直に止めてくれる性格ではない。
それでも、できるだけ刺激しないように、言っておくべきことは言っておく。
「あの……どうか、町を半壊させるのは勘弁してください」
半年ほど前のことを思い出す。
ここ最近になって、やっと、忍びが通常勤務に戻れるようになったのだ。
補佐官は、すぃと視線を泳がせ、巻物に触れた。
「…………………………………………大丈夫だって」
「嘘、嘘っぽいっすよ、ちょーっと!!!!」
白い歯をキラリと見せる微笑みを浮かべ、
補佐官は颯爽と資料室から消えてしまった。
やばい、あの目は、マジに何かやる気だ。
特S級非常事態とばかりに忍鳥で召集をかけ、
急いで火影、補佐官の所在確認を頼む。
今日は徹夜だな、と嫌でも察する快晴のとある一日。
火影と補佐官の掛け合いは密かな木の葉名物
070311:修正
050325:作成
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