いっつも君は捻くれていて、
いっつも君は無愛想で、
いっつも君は暴力的で、
だけど、優しい笑顔がちょっと可愛かった。
そしてもう一回見たかった。
ただそれだけ。
「…………なんだよ市松」
「んー、別に」
気のない返事で、ポピィ君の頬をぐいと引っ張る。
笑った顔を作らせて見たけど、やっぱり無理やりな感がある。
当然、次の瞬間にはバシリと手痛い叩きをくらった。
「何するんだよ、酷いじゃないか」
「そっちこそいきなり何なんだよ!!」
ポピィ君は、相変わらず目つきが悪い人相で睨みつけてきた。
もうちょっと朗らかに笑えないものだろうか。
元から明るくもない性格なのに、そんな顔じゃ更に根暗人間に見える。
「そうだ、睨めっこしよう」
「はぁ? ……なんか変なこと考えてそうだからヤダ」
こんなとき、アンドロイドで良かったなと思う。
嫌な予感はしつつも、実際僕が何を思っているかまでは、彼には読めない。
きっぱりと断られたが、めげずにもう一度同じことを繰り返そうとしたところで、
背後から凄まじい轟音が聞こえた。
どうせ、チャチャさんたちがまた何かやらかしたのだろう。
正面にいるポピィ君は、僕の背後を見て、顔色がすっかり白くなっていた。
何だろう? 気になって振り向く。
けれど後ろで何が起こってるか視認する前に、
僕の首が、取れた。
「ってかよ、結局お前、何したかったわけ?」
「……………別に」
もげた首を定位置にセットする。
ちょっと接触が悪いかな?と感じたが、ちょっと角度をずらすと直った。
ポピィ君は怪訝そうな顔で、だけど何も言わない。
心が読めないというのは、僕にとって素晴らしいアドバンテージだが、
それと同時に、察してくれない煩わしさも感じていた。
「なんか悩み事でもあるのか?」
もみじ学園とか……、そう続けられた言葉に僕は首を振って否定した。
見当違いも甚だしい。けれど一々否定するのも面倒くさい。
君が原因なんだよ。さっさと気づいてよ。
「どうしたのだー、市松君?」
小さな水色狼がべたりと右肩にくっつく。
気づけば、チャチャさんたちも僕らの傍にいた。
「悩みがあるなら私たちが手伝うよ!」
「……とーっても難しいことなんだ」
「とりあえず言ってみましょうよ。僕たち、口は堅いですよ」
本人も目の前にいることだし、馬鹿正直なことは言えない。
だが、下手に誤魔化せば余計に彼らの好奇心を刺激するだけだ。
できるだけ、致命的な名前は避けて、言葉を選んで事情を話す。
「笑った顔が見たい人が、いるんだ」
周囲の空気が、すぅっと静かになった。
いつも騒がしいのに。皆口をぽかんと開けて、固まっている。
それは時間にして数秒だったが、何故だかとても長い時間に感じた。
一番最初に復活したのはチャチャさん。
顔を赤らめ、瞳をキラキラと輝かせて僕の肩をつかんだ。
「ねぇねぇ、どんな人?! 私たちの知ってる人?」
「えー、いや、知らないんじゃないかなぁ」
次に復活したのはしいねちゃん。
「で、どんな人なんですか?ほら、それによって作戦を考えないと!」
「……孤独な人」
「へー、市松君はそーいうのがいいんだじょ」
「あとは、何ていうか、素直じゃない。捻くれてる」
「…………難しそうな子だな」
君の事なんだけどね、ポピィ君。
四人はそれぞれ頭を捻らせていたが、結局良い案なんて出ない。
勿論、僕もそんなに期待してなかった。
けれど、最後の最後で、彼らは僕に最高の助言をくれた。
「セラヴィー先生に聞いてみれば?」
「ああ、捻くれた人間の相手は得意そうだぞ!」
「あの人自身、相当捻くれてますしね」
「……適任と言えば、適任かもしれない」
例えばもし、ここで彼らがこんな提案をしなければ
「わかった、相談してみるよ」
エガオンは生まれなかったことだろう。
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