今日も今日とて任務。
いい加減、飽きてくるんですケド?
こちとら、最近は連日でアカデミーの悪餓鬼sとつるんで
悪戯に全力を注いでるから、深夜の任務は結構きつい。
イルカ先生も、名家旧家の子どもたち及び可哀相な九尾憑きの俺に
一欠けらの容赦というものがなく、罰としてアカデミー全部のトイレ掃除を任せたりする。
あれは地味に辛いものがあるのです。
絶対使われて無いだろってトイレまで掃除だからね。埃が酷い。
「コノト!! てめぇ何ノロノロしてんだ! さっさと終わらせろ」
どこからか、俺の相棒にして参謀のカノコから愛の応援を頂いた。
嬉しすぎてちょっくら上級忍術を声のする方にぶっ放してやろうかと思ったけど
、
それは下手すると、保護した名家の子女さんたちに当たるかもだから止めといた
。
ちなみに名家の子女って、日向のヒナタとハナビね。
妹はよく知らないけど、姉の方は偶然にして俺たちのクラスメート。
俺に惚れてるんだかネジに惚れてるんだかわかんないけど、
可愛い顔だし巨乳だから男子の間では隠れ人気と。
……ちょっとカノコの殺気が酷くなってきたのでちゃちゃっと敵さん片付けます。
敵さんはあらかじめ周到に誘拐計画してたのか、
逃亡経路にはかなーりいっぱい罠が仕掛けられてました。
それでもほら、森という森で遊びつくした俺には
目を瞑ってでも木々を抜けられるからさ、暗闇で罠を避けるなんて朝飯前。
むしろ札のトラップ、回収してます。
「ん、こんなもんでいいかな」
手元で発動しないように、一応今は術式で強制停止させている。
俺の札は一切使用せず経済的にも優しい、尚且つこれだけの起爆札があれば……
適当な距離を置いて追い詰めていた敵さん方に、
スピードを上げて一気に近づく。更に跳躍で真上に飛んだ。
起爆札を盛大にばらまく。
手持ちの札ではないから欠片も躊躇しない。
耳塞ぐ。
「……いやぁ、いい仕事してきた」
よくねぇわボケェェ!!!、と本来つっこんでくれるカノコ君はいない。
流石にここまで爆発が大きくなるとは思わなかったが、
まぁ、大丈夫。多分。
この火事も、今日は雨が降っていたからそこまで大きく燃え広がらないだろうと
高を括って放置決定。
さて戻ろうと足を向けたところで、微妙な人の気配がした。
二次被害起こしちまったか、と爆発から少し離れたところに急いで走れば、
カノコがよたよたと木にもたれていた。
「コ、コノト……てめぇ……………よくも」
「うわ、ごめん。もしかして爆発に巻き込まれてた!?」
喋る気力も無いのか、カノコは黙って頷く。
裂傷と火傷が酷く、確かにこれは立ってるのも辛いだろう。
「もう片付いたから大丈夫。
後で奈良家のシカマルに言って、特効薬持ってこさせるからさ」
「………早く、な」
「うん。ごめーんね」
ほっとしたように笑ったカノコの首筋に、思いっきり小刀を突き刺す。
血が勢いよく出て、出血死だろう。
変化の術が解けて元の姿に戻った死体を、
ひとまず邪魔にならない、だがわかりやすい場所に移動。
焼くのも面倒で、後で処理の人間を引き取りに来させることにした。
他里の忍者だから、情報収集の目的で嬉々として解剖にかけられるんだろう。
何だかんだできっちりエグいね、木の葉の里も。
「ふー・・・・任務終了っ」
俺が、カノコと示し合わせた場所に戻ると、
あいつは保護したヒナタと何やら話していた。
「……妹が、お腹を蹴られて………内臓は大丈夫みたいなんですが」
「うん。ちょっと痛そうだな。応急でこれ張っておくから、少しは楽になると思うけど」
どうやらハナビの手当てをしていたらしい。
日向の跡継ぎとか言われてるけど、やっぱりまだ年端も行かない子どもだもんな。
俺が近づくと、ヒナタは目に見えて顔を青ざめて怯えた。
あー…………返り血。
「だいじょぶだいじょぶ、俺、木の葉だから」
「いや、そういう問題じゃねぇし」
「……えっと、ほら、怖くないよ? この血も俺の血じゃないし」
「余計怖がらせるからおまえ黙れよ」
『ナルト』にも優しいヒナタとは、できれば仲良くしたいんだけどねぇ。
「じゃあ……大丈夫、この血、ほとんど俺の血だから」
「重症だっ」
べしりと、頭に手刀を打ち込まれた。
カノコはいつの間にやらツッコミ技術がかなり上達してきている。
俺のたゆまぬボケのおかげだな、うん。
このコミカルなやりとりが受けたのか、ヒナタはくすくす笑いはじめた。
しかも、つっこまれたとき落とした俺の暗部認識票まで拾ってくれるし、
超優しい子だ。あのむっつりネジには勿体無いね!
「……この字で、『コノト』って読むんですか?」
「んぁっ? あー、そうそう。火影様が勝手に名づけてたの」
プレートには『狐之刃』って書かれてる。
ある意味、バレる時はすぐバレそうな名前だよね。
いつか改名してやる。
ヒナタは、火影直々の名前っていうのに憧れたらしく、
俺のことを尊敬の眼差しで見てきた。かっわいー、なんつーか、初々しい?
あのクソジジイもこんな可愛い子どもたちに慕われて、まだまだ現役だねぇ。
「ちなみにカノコも俺と同じで火影様から名前もらったクチだから」
「わぁ、すごいです……カノコさんはどんな字なんですか?」
「くっくくく………それがね、カノコはぁ、
鹿のベイビーって書いてカノコ「何間違ったこと吹き込んでんだぁ、コノト!!?」
『鹿の子』じゃなくって『鹿之護』ね。
こっちもこっちで、バレる時はバレる名前だわ。
三代目のじっちゃんは、俺を里の剣に、シカマルを里の盾として
頑張ってほしいんだよって意味で名づけたんだろうな。
「いや、でも俺最初三代目がカノコって言い始めたとき、
てっきり鹿の子だと思ってたし」
「実際は違うってわかってるのに何故に過去の自分の勘違いを人に教える!」
「そりゃあ、ねぇ?」
「ねぇ? じゃねぇだろうボケ忍者」
「いやん、そんなに怒るなよ。お兄ちゃんは悲しいぞー」
「誰がてめぇみてぇなボケを親族に入れるかってんだ、あぁ?」
「さっきからボケとは何だボケとは。里のスターに向かって」
「スター? ああ、確かにボケ代表ではあるな。その内ビンゴブックにも
『木の葉一のボケ』で載るんじゃねぇの?」
「はぁ? ありえなーいね。
じゃあお前は木の葉一のモヤシだモヤシ。腕相撲弱いし」
「んだと? てめぇこそ俺に”腕相撲でしか”勝てないくせに
口だけでも頑張って虚勢張ってる姿が痛々しいなぁ、おい?」
「……上等だ、表出やがれこのインテリ引きこもりがぁぁ!!!」
「おー、こっちこそ上等じゃねぇか単細胞のバトル馬鹿!!」
「…………任務の報告、しなくていいのかしら。
というか、私たち、帰るべきかなぁ」
「姉さま?」
「あ、起きちゃったのハナビ……家に帰ろっか」
「んー……」
姉上ではなく、昔のように姉さま、と呼んでくれる
寝起きのハナビにくすりと微笑ましさを覚え、ヒナタは妹の手を引いて帰途に着く。
「お礼、ちゃんと言いたかったけど………また会えたら……いいな」
一度、彼らが先ほどまでいた場所を振り返る。
既にその姿はない。ただ、物凄い轟音と煙臭い風が周囲に霧散し、
できる限り早くこの森を抜けようとヒナタに新たな決意を促させた。
後日、三代目火影が逃げる暗部トップ二人を縄で縛って
日向家に詫びを入れに行くことになるのは、まだ誰も知らない。
060723:書き直しました
050325:作成
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