「シノ、お願いがあるってばよ」
「・・・・何故ここにいる」
シノの言葉はもっともだった。
ここはシノの部屋。
休日なので少し部屋の掃除をしようとしたとき、いきなり声を掛けられた。
横には何故かナルト。
自分の部屋に。
いつのまにか。
「窓からちょっと侵入を・・」
「普通に扉から入って来い」
「急ぎの用件なんだって!」
あまり急いでいるようには見えないが、シノはあえて問わなかった。
ナルトは片手に持っていた本を読み始めた。
「えーっと・・ん、あった。ここに書いてある虫ってシノ持ってない?」
ぽんぽんと肩を叩きながら本に挟まれていたメモをシノにつきつける。
シノは雑に書かれた文字を読み始めた。
「・・・・・ナルト、これは・・」
芋虫、毛虫、蜘蛛・・・・わざわざ種類別に細かく書かれているちょっとアレな虫。
いくら虫好きと言っても、そんなものは普通もっていない。
「ゴキブリなら俺でもまぁ・・結構楽に手に入れられるからいいけど」
「いや、そういう問題なのか?」
「いいじゃん。で、持ってない?」
シノは無言で机から赤ペンを取り出し、いくつかに丸をつけた。
「これらなら、近くの森でも容易に採れる。
他は・・・・ちょっと今のこの季節ではいないのではないか?」
「・・・・・ふーん、そっか。ありがとシノ!」
満面の笑顔でシノに礼をして、ナルトは窓から出て行く。
「いや、だから窓から・・・・ふぅ」
ナルトはとっくにいなくなっていたのでシノはため息一つ。
部屋の掃除を再開しようとすると、勢いよく窓が開く音がした。
「だからナル・・・・シカマル?」
てっきりまたナルトが来たのかと思ったが、そこにいたのはシカマルだった。
顔色は悪いし眼も据わっている。
「・・・ナルト、ここに来たのか?」
「ああ」
本当に余裕のなさそうなシカマルはシノに尋ねた。
その問いに簡潔に答えると、シカマルは更にシノに詰め寄る。
「どこに、どこに行った!?」
「近くの森に行けばいいと俺は教えたが・・・」
あまりに曖昧で不確定すぎる答えにシカマルは肩を落とす。
「一体どうしたんだ・・?」
あまりに真剣な様子に、シノは問わずにいられなかった。
当のシカマルはゆっくりとシノを見上げ力なく笑った。
「あいつ・・・虫を」
「虫を?」
「俺に食わせようとしてるんだよっ!!!」
シカマルの押し殺すような低い声は、
普段のやる気の無いのんびりした声とはあまりに違いすぎていて・・・普通に怖い。
とりあえずシノはシカマルを宥め落ち着かせることから始めた。
「まぁ・・落ち着け。もう少し詳しく教えてくれないか?」
「・・・ああ、すまねぇ」
「やっほー、シカマル・・・・・凄いな、どうしたんだよこの本の山」
部屋にやってきたナルトは山積みにされた本を見て目を丸くした。
シカマルはあまり自分の部屋に本を置かないようにしていたからだ。
(その代わり暗部のカノコとして使っている部屋は凄まじいことになっているらしいが)
「・・・うちの蔵の整理するのに、一時的に置いてるんだよ」
「ふーん、奈良家の蔵かぁ・・・なんか面白い本あった?」
「特にはねぇな・・一応親父たちも選別はしたみたいだし」
禁書関係はおそらく大人たちが保管しているのだろう。
ナルトは近くにあった本をぱらぱらと慣れた手つきで開いてみる。
「・・・・・ん」
「どしたナルト?」
「いや、別に・・・・・」
ナルトはにはっと笑って手を振った。
再び本に目を落とす。
シカマルはその動作に妙な違和感を覚え、ちらりとナルトの方を盗み見る。
ナルトの読んでいる本。それは
「・・・・げ・・(『悪食のすすめ』かよ、よりにもよって!)」
「どしたのシカマル?」
「いや・・なんでもない」
先ほどのナルトの台詞と似たような応対をするシカマル。
ナルトが再び本を読み始めたので、シカマルも同じように目を逸らした。
『悪食のすすめ』
シカマルもそのタイトルが気になって流し読みした本である。
その内容は・・・・まぁ、名の通り悪食の文化を紹介し、
時折その調理法などを載せていたりもした。
悪食と言っても確かその本の主題は・・・・昆虫食。
「シカマルー、俺そろそろ帰るわ・・・あとさ、本借りてっていい?」
「・・・ナルト」
「・・・・・・何?」
「まさかとは思うけどな、おまえ・・・俺に食わせる気・・じゃないよな?」
シカマルの問いに、にやりと笑った。
「今日の夕飯お楽しみにしてろよ〜」
「ってマジかよ!!!」
シカマルは本の山を飛び越えてナルトを捕まえようとするが
当然行動を先読みしていたナルトは逃げきった。
「〜〜〜ナルト!!!」
「・・・・・・ということがあったわけだ」
シカマルはシノに今までのあらましを伝える。
シノは神妙にその話を聞き、眉を顰めた。
「何というべきか・・シカマル、昆虫食とはそれなりに伝統ある文化であって・・」
「ストップ。俺だってそれぐらいはわかってる」
しれっとした顔でシノの発言を押しとどめるように手を前に出すシカマル。
大体俺は虫料理にそこまで偏見ないし。と言葉を続けた。
「ならば別にそこまで嫌がることはあるまい」
「・・・あのナルトが、普通の昆虫料理を出すとは思えない」
「は?」
「例えばシノ・・・なんか違和感ないか?」
「・・・?」
「寄壊蟲がいないとか」
「・・・・・・・・・・・・!!!」
「・・・・やっぱな」
「三十二匹、消えている・・」
きちんと正確な数までわかるらしい。
シカマルは真剣な顔でシノを見た。
「なぁシノ・・このまま日が暮れれば、
おまえの寄壊蟲はマジで俺の夕飯として出されちまう・・・協力してくれ」
「当たり前だ・・・・大体寄壊蟲は食用じゃない」
がっちりと握手を交わすシカマルとシノ。
寄壊蟲三十二匹分の命が係っているとあらばシノも真剣にならざるをえない。
蟲の雌がナルトが誘拐した寄壊蟲の中にいるらしいので、行方は比較的楽にわかる。
二人は急いで家を出て森に向かった。
途中出会ったキバやチョウジが、声を掛けるのを躊躇うほど鬼気迫った顔の二人。
普段物静かで大人しい人間をここまで切羽詰らせるとは、
ある意味ナルトはとても大物なのかもしれない。
決して昆虫食を馬鹿にしたり、嫌っているわけではないんです。(弁解)
・・・本当はここで終わらせてしまおうかと思ったのですが
あまりに中途半端なので蛇足→