「賭」の文字を背負った一人の美しい女性がソファに座って手紙を読んでいました。
彼女は襲われた自分の里の再建に尽力を尽くしている木の葉の里の長。
そんなある日のこと、
アカデミーに通っている、今は亡き三代目の孫の木の葉丸が
他の里の忍びに攫われてしまったのだ。
彼らは、門外不出の幾つかの禁書を綱手から直接渡すよう要求しました。
おそらく五代目火影の命をも取ろうとするだろうことも簡単に予想できる。
罠とわかっていながらも、彼女は一人で禁書を持って里を出た。

彼女が指定された場所の近くの町に着くと、一人の青年が話しかけてきた。
17,8ぐらいで薄い茶色の短髪で、なかなか目を惹く美男子である。
「綱手様、話は聞いております。私もお手伝いいたします」
その青年はそう言って木の葉の額宛と暗部の仮面を取り出した。
綱手は彼が味方であることがわかったがきっぱりと断った。
「悪いけどあんたを連れてはいけない。下手に味方がいるとわかったら
 人質が殺されてしまうからな」
青年は予想していたのか、大して気にした風でもなく、
『そうですか』と答えて去っていってしまった。
あまりにあっさりと引き下がったので綱手は不信に思いましたが
気にしている余裕も無かったのですぐに忘れてしまいました。

約束の場所に行くと、数名の忍びが木の葉丸を連れて立っていた。
「ほら、約束のものだ。子供を返しな!」
持ってきた巻物を見せると一人の忍びが木の葉丸を前に押し出した。
こちらに走ってくるのを確認し、綱手は巻物を上に放り投げた。
それが地に落ち、何も無いことを確認してから忍びはそれを手に取った。
「本物ですね。まさか本当に持ってきてくださるとは思いませんでした」
「できればこれで取引終了と願いたいんだがな」
「それはできませんよ。木の葉の火影がわざわざ一人でいるのに
 狙わないのは忍びとしてどうかと思いませんか?」
言い終わるや否や四方から何かが飛んできた。
手持ちのクナイでそれを弾きながら綱手は木の葉丸を抱え、全速力で来た道を戻る。
もともと戦闘を起こすつもりは無かった。
子供を抱えてただでさえ不利であるのだから。
森に入ったときに見つけたかなり大きな大木の根元に木の葉丸を押し込める。
「いいかい、絶対ここから出てはいけないよ。
 朝になっても私が来なかったらこの道を行けば町に出る」
そこでとりあえず保護してもらいな、とできるだけ不安を与えないように話す。
木の葉丸もやはり忍者の卵、泣き顔だが声は出さず頭を大きく縦に振った。
綱手はすぐさまそこから離れ、片手にクナイを持って走り出した。
しばらく走ると、ごく僅かだが人の声が聞こえた。
そちらの方に、できるだけ音を立てないように近づくと、忍びが倒れていた。
見覚えがある。禁書を手にしていた男だ。
「綱手様があの子供隠している間に俺が片付けちゃいました」
いきなり後ろから声がして、はっと振り返ると先ほどの町で話しかけてきた青年がいた。
息も乱さず、だが木の葉の額宛にはまだ乾いていない血がついていた。
「あんたがやったのか?」
「ああ、綱手様一人だけじゃやっぱ心もとなく感じて・・あいつらもそこまで弱くなかったし」
決して貶めるような口調ではない。
「あんた何者だい?確かに木の葉の者のようだが」
「コノトです。三代目直属の暗部だった」
「ああ!あんたが・・。確かカノコとかいう奴とだけとしか組まない噂の」
コノトは驚きで眼を見開き、そして先ほどまでの丁寧な口調は何処へやら、
雰囲気もがらりと変わり砕けた口調で話し始めた。
「まさか俺の相棒の名前を就任したばっかのあなたが知ってるとは思わなかった。流石五代目火影様。
 ・・そのカノコは別の長期任務でこっちには出て来れなくってよ」
でもあいつの方がきっつい仕事だから俺こっちで良かったー、と小声で付け足す。
「相棒とは聞いていたが・・・仲がいいのか?」
基本的に暗部は素性を同じ任務をこなす仲間には知らせない。
勿論、暗部の中でも仲の良い者も多いがここまで親密なものはいないだろう。
「ああ、あいつは任務だけの仲じゃない。俺の片割れだ」
双子って意味じゃないから、と言いながらコノトの顔は僅かに緩む。
その様子が妙に人間味があって、綱手は少しばかり親近感が沸いた。
「はは!面白い奴だ。とりあえずあの子供連れて帰る。勿論コノトも一緒だ」
「御意。・・・ってか夜更けだし今日はもう泊まりですか?」
「私は金なんて持ってないわよ」
シズネが賭け事をしないように財布の紙幣を全部抜いていた。
・・・来る途中に賭場に寄ったとき気づいたのだが。
「信用されてませんねー・・って俺も持ってないし」
ってことは
「「野宿・・」」

綱手と木の葉丸、そしてコノトは森の中にある小さな湖の側で野宿をすることにしました。
木の葉丸は疲れて眠ってしまい、コノトが夜の見張りを勤めることになったので
綱手もうとうととうたた寝していました。
二人が眠ったのを確認すると、コノトはそっとその場を離れました。
コノトは数十メートル離れた場所で、チャクラを使いすばやく木に登りました。
そして、その木の枝にとまっていた赤黒い赤ん坊ぐらいの大きな鳥の首を掴み、幹に押し付けました。
「てめぇがあの忍びどもをまとめていたな」
どすの利いた声でクナイを鳥の首筋に突き刺すと返り血が身体にかかった。
更にその鳥は、喉を切られたにも関わらず歌いだした。
「殺した殺した、おまえが殺した。血を浴びたおまえには呪いがかかる。
 おまえの里の長はおまえに恩義を感じて側に置くだろう。
 綺麗な花束を、おまえの里の長はもらうだろう。だけどその花束には毒虫が。
 可愛らしい犬を、おまえの里の長はおまえに見せるだろう。だがその犬は長の喉下にくらいつく。
 珍しい布地を、おまえの里の長は他里の商人からもらうだろう。だがその商人は暗殺者。
 この三つのうち、一つを誰かに言えばおまえの足腰は石と化す。
 この三つのうち、もう一つを誰かに言えばおまえの肩まで石と化す。
 この三つのうち、最後の一つを誰かに言えばおまえの頭は石と化す。
 殺した殺した、おまえが殺した・・・・・・・・・・・・・・・・」
歌い終えると鳥は灰となり消えうせてしまった。
「・・ちっ、やっぱり妖の類だったか・・・・呪われたのか?」
コノトはしばらくその場に座って考え込んだが、良い答えが出るわけもなく
湖に戻り血を洗い流し二人の所へ戻っていった。



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