「おい、あの狐どこ行きやがった!?」
「わかんねぇ・・・だが、あの山道に登っていった痕跡があるぞ・・」





黒髪の子ども・・シカマルだったか?、と別れて、ちょっと歩き出したところで
何か嫌な気配を感じた。
ああ・・・もしかして俺の大っ嫌いな忍者さんたちが来てるの?
ここは所有地で立ち入り禁止っぽいのに、よくやるねぇ。

俺はできるだけ、あいつに迷惑をかけたくなくって、走り出した。
少しでも、離れよう。できれば山からも出たい。
だけどちょっと足に力が入らなくて木の根につまづいた。
・・・・・やっぱあの握り飯食べとけばよかったかな。




それでもなんとか、頑張って走っていたら、
いきなり背後から首根を掴まれて地面に押し付けられた。
超不覚!!これでも逃げ足には自信があったのに。

もがこうとしたら頭を思いっきり蹴られた。
手加減なしっぽい。
しかも、どうやら相手さんは二人とか三人とか、そういう数じゃないらしい。
ちょっと、酷くない?




「死ね、死んじまえ!!!!」



ったく・・・そんなに、俺が憎いわけね。
別に、いいけどね。俺だってあんたらが憎いもん。
誰がこんな里好きになれるかってんだ。
・・・・・・そうやって死ねって言いながら蹴ってるけど、
どうせあんたらだって俺を本気で殺そうとはしないんだろ?
そりゃ怖いもんね、火影様の罰も九尾の呪いも。
いつか後悔するがいいさ、今この時俺を殺さなかったこと。
・・・・いつか・・・・・・・・。




「ちょっと、そこの忍者さんたち。何してるんですか?」
「・・・・・・・・」

痛みのせいで意識を手放しかけた俺の頭の中でさっき会ったあいつの声がする。
何でこんな時に?そんなに、気になってたっけなぁ・・?

「ここは奈良家の所有地です。無断で入られる方には
 それ相応の処罰が下りますよ?」
「・・・・」
「ちなみに俺を口封じしようと攻撃したら、即座に奈良家と契約している
 鹿たちが、本家や俺の家族に知らせてくれるのでかなり無駄です」

違う、頭の中じゃない。
本当に、ここにあいつがいるんだ。
・・・何で?・・・・・そっか、ここは、まだ、所有地だったか。

「今ならそいつを置いて、さっさと帰ってくだされば結構ですよ?」
「こいつをどうする気だ?」
「奈良家の所有地に入った以上、それなりの罰則は子どもであろうと受けてもらいます」

随分冷たい声。さっきのあいつと別人みたい。
顔は見えないけど、忍者たちがにやにやと笑っているのがわかった。
ま、当然か。俺を引き換えにすればお咎めなしだもんね。
背中にかかっていた圧力がすっと消えた。
蹴られていたときはあんま感じなかったけど、結構今痛いかも。



「おい、大丈夫か?」
「・・・・俺、何されるの?」

あんまりきつい罰なら本気で逃げる。
右目が腫れてるらしく開かないので、左だけでこいつの顔を見る。
あんまり感情の変化が現れない顔だけど、きょとんとして俺を見返してた。
何?

「ぶっ・・あっはっは!!そんな罰則なんてあるわけないだろ」
「は?」
「奈良家の鹿の角の調合の技術を盗みに来たならわかるけど、
 こんな辺鄙な鹿山に入ったぐらいなら、ちょっと説教されるぐらいだって」
「そういうもんなの?」
「そういうもんだよ」

俺がすごく心配してるのがよっぽど面白かったらしく、
こいつずっと笑ってる。おい、笑いすぎ。
・・でも、さっき、『それ相応の処罰』って・・・
あれ・・・・・?もしかして

「俺を、助けてくれたの?」
「流石に子どもが思いっきりボコられてたら助けるだろ・・」
「あ、うん・・まあ、そうだけど」

何を当たり前な、って顔してるけど、結構すごいことだよ。
だって、あいつら思いっきり忍者だったじゃん。
見ない振りが一番安全だったのに、わざわざ助けてくれたの?
三代目のじいちゃんじゃないんだから、下手したら
俺と同じように殴られて、更に下手したら殺されてたかもしれないのに。

どうしよ、こういうとき、何て言うんだっけ。
ああ、頭の中がごちゃごちゃしてど忘れしちゃった。
じいちゃんがよく言ってるのは、確か




「あ、あ、ありが・・・・・」

ぐぅ


鳴った、思いっきり腹鳴った。
本当にTPOを弁えてくれよ俺の腹!!!!
今、すっごい頑張ったのに!


「やっぱ、腹へってんじゃん」

そう言って、俺にさっきの握り飯をもう一度渡してくれた。
あ・・・食べたい。
でも・・・・・・・・

俺がうだうだ悩んでると、シカマル君(だっけ?)は
躊躇いなくガブリと半分ぐらいその握り飯を食べた。
もぐもぐもぐもぐ、とか擬音がそのまま聞こえそうなぐらい美味そう。

「ほら、何も変なもん入ってねぇよ」

・・俺が、食べ物警戒してたのわかってたんだ。
・・・・・・そうだよね、ここまでしてくれてるのに、
警戒するなんて、俺ってものすごい失礼だったかも。

「・・いただきます」

これでもし、毒が入ってても、俺、いいや・・・後悔しない。
ぱくりと一口で食べたソレは
丁度良い塩味で味付けされていて、




何故か俺の嫌いなピーマンが詰められていました。







ごめん、凄く後悔した。










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