・・・一度、じいちゃんが俺に頭を下げて謝ったことがあった。

『ナルトがこんな仕打ちを受けるのは全てわしら火影のせいじゃ・・
 本当にすまん、本当にすまなんだ・・』

涙声で謝罪を繰り返すじいちゃんを、俺は他人事のように眺めていた。
だってじいちゃんの謝罪は、結局この里が変わらないってことだから。

そんなもんだと思った。
どうしても、人は負けてしまうことがあると思う。
じいちゃんは、この里が大切すぎて、負けたんだ。
だから俺だけは絶対負けてやるか!と思って今まで生きてきた。

だから・・・俺と同じことを考えているあいつを見たとき、
ほんの少し嬉しかった。












自分の部屋に戻ってきても、まだ頭がぼーっとしていた。
疲れたせいもあるけれど、やっぱりあのシカマルが原因。

『やられっぱなしでいいのか?』

よくないに決まってるじゃないか。
誰がこんな理不尽な運命諦めて受け入れてやるかってんだ。
ずっと前から強く思い、そのために努力だってしてきた。



「奈良・・・シカマル、か」

奈良家っていったらそこそこ名の知れた名家だし、
確かにあの特徴的な容姿は、奈良の血を継いでるってすぐわかる感じだった。
そういう古くからの家ってのは頭が固い奴らの集まりだとばかり思ってたけど、
あいつを見る限り、どうやらそういうわけじゃないらしい。

一瞬、あいつと一緒なら里の奴らを見返せるかもしれないと思った。
あいつなら・・快く俺に協力してくれるかもしれないと思った。
俺が頑張って頼めばもしかしたら・・・・・

僅かではあるが現実味を帯びた俺の希望。すぐさま俺はその考えを振り切った。
絶対駄目。
今日だってすごくあいつに迷惑かけた。
もう、これ以上巻き込んじゃいけない。




俺はぺしりと、自分の両頬を叩いて気合を入れる。
よし、今日はもううだうだ考えないで寝よう!


「ギャウ!」


ふと、背後から何やら妙な鳴き声がした。
・・・・やべっ。

「悪い、おまえのことすっかり忘れてた」

大人の猫と同じぐらいのサイズの狐。
森の中で酷い怪我をしていたから昨日持って帰ってきたやつだ。
手当てしたのはいいけど飯とか全然やってなかった。

急いで俺は冷蔵庫からトマトを出して狐の前に進呈する。
冷蔵庫の掃除には結構重宝するな。

「・・・・・」
「何だよ、トマト嫌いか?」

好き嫌いなんて狐でもするんだな・・
仕方なく、生の鶏肉を出したら喜んで食べた。

「傷が治ったら、森に返してやるよ」
「ギャウ!」

結構面白い鳴き方するよな、狐って。
こういう小動物飼うのもいい気がするんだけど
この里で『狐』なんて、見つかったら危ないよな・・しかも飼い主が俺だし。

大体、今日因縁つけられて追いかけられたのだって、
実はこいつ助けるとこ見つかったからなんだよね。
・・・・・できるだけ早く住処に戻してやろっと。



俺が布団に入ると、狐が枕元まで近寄ってきた。
やばい・・毛が・・・・ふさふさ。

「・・・・・・・・おまえ、俺のマフラーになる気ない?」
「・・・・」

言葉はわかってないだろうけど、
俺の言ってることに何か不穏なものを感じたらしく、
狐はそそくさと離れていってしまった。
嗚呼、毛皮がー・・・









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