じいちゃんが、アカデミーに入らないかと最近誘ってきてくれた。
嬉しくて嬉しくて、一週間ぐらい浮かれてた。
ラーメンの一楽ってお店のおっちゃんたちが
九尾とか関係なく俺に優しく接してくれる人たちで、
信じられないぐらい幸せで、一週間ぐらい毎日店に通ってた。
ここ最近は、本当に自分にとってありえないぐらい
幸せなことが続いていて、何となく気が緩んでた。
俺を特に苛めてた忍者たちも、あんまり攻撃しなくなってて。
だからいっつも逃げ込んでいた森には行かなくなった。
森といえば、数ヶ月ぐらい前に助けた狐を思い出す。
元気にやっているだろうか?
子どもか何かにもう悪戯されていないだろうか。
・・・狐を思い出すと、連鎖反応で奈良シカマルを思い出した。
あいつは、今も変わらずいるだろうか。
俺が仲良くしていたら、きっと迷惑がかかる。
だからすぐに離れたけど、もしかしたらあの時の
忍者たちが因縁をつけているかもしれない。
でも、ここで確認するために近づいたらまたそれで悪い方向にいってしまうし。
結局現状放置が一番だ。
とりあえず、元気でやっていることを祈る。
・・・・・・なんていうか、あいつらのことを思い出したら山が恋しくなった。
たまには山に行くのもいいかな。
ちょっと天気が悪くなってきたけど、
自然の緑ってのは心と眼を癒す効果があるらしいし行く価値はある。
・・適当に理由つけてるけど、ちょっと狐が元気か見たいだけなんだけどね。
前に比べれば、人の気配もわかるようになって。
俺は山道を降りてくる『誰か』に気が付いた。
シカマルかな、とも思ったけど、気配が複数だったから急いで隠れた。
いや、まあ、シカマルだったとしてもどっちにしろ隠れるけどさ。
「やっぱさぁ、ある程度動く的じゃないと意味ないよね〜」
「ってか明後日じゃん、試験」
「俺右手ならできるけど左手だとできないんだよ・・・」
数人の子ども・・といっても俺より年上の、多分アカデミーの上級生。
クナイを持っている奴もいるけど、練習用の木製のものを
数本持っている奴もいる。練習していたんだよな、どう見ても。
「でもさ、ちょっと可哀想じゃなかったー?」
「何言ってんだよ」
「そうそう。狐なんて悪魔の化身なんだよ?
変にそんな同情したら絶対憑かれたりしちゃうぜ!!」
ぞっとした。
九尾が里を襲ったとき、あの子どもたちは
戦うわけでもなく、ただ避難所にいて、庇護されていただろうに。
狐は悪魔の化身?
己だけでそんなことを考えつくわけがない。誰が吹き込んだ。
・・・・大人の悪意は、着々と子どもに伝染しているらしい。
子どもたちをやり過ごして、俺は再び山道を歩き出した。
良くなかった空が更に悪化して雨が降り出した。
それでも俺は歩いて、しまいには走って道を登る。
嫌な予感がした。
いや、予感ではなく確信とも言うべきか。
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