どこかで、もうナルトとは二度と会えないと思ってた。
だからこそ、こうしてまた会えるとは思っても見なかったし、
何よりも、この家まで来るとは予想だにしなかった。
あいつは見覚えのある小さな狐を抱えて雨の中を走ってきたらしい。
俺にぐいと傷ついた狐を押し付けて、べちゃりと泥の上を仰向けになって倒れた。
手当てをしろってことだよな。
「おい、ナルトも家の中入れ」
「・・・・・いい。俺ここにいる」
親父たち・・・大人がいる家に入る気はないらしい。
多分大丈夫だとは思うのだが、家に入る入らないでひと悶着起これば
その分時間をくって狐が危なくなる。
仕方なくナルトを放置して、
狐を自分の部屋のベッドに寝かせ、押入れから急いで救急箱を持っていった。
医療技術なんて無いので、こんなんで治るかどうかはわからないが、やるしかない。
狐なぞ、誰も治療なんてしてくれないのが、この里の実情なのだから。
「ナルト。あの狐、多分治る」
「・・・・・・そっか」
ずっと雨に打たれていたのか、顔色があまり良くない。
こっちの心配は何のその、ナルトはほっとしたように笑う。
そしてすぐに起き上がって、畏まった態度で俺に頭を下げた。
「本当に、ありがとう」
「どういたしまして」
「・・・・・あいつ、邪悪なもんだって言われて、クナイの練習台にさせられてた」
「・・・・・・・そうか」
狐が助かったので気が緩んだのか、
怒りを隠そうともせず、俺に事情を説明した。
目ではなく、ちゃんと口で語ってくれるのは有り難い。
まあ、狐のことは、何となく、そうじゃないかなと見当はついていた。
鋭い刃傷は少ないが、かなりすり切られた傷が多かった。
ナルトはぎゅっと口を噛み締めて、俺を睨んだ。
「なんで、そんなに・・俺たち、そこまで・・・いちゃいけない存在?」
そんなことはないと言っても、意味が無い。
俺だけでは、だめなんだ。
こいつに今必要なのは、慰めなんかじゃない。
「悔しい・・悔しいよシカマル!なんでなんでなんでなんで!!!!」
「弱いからだ」
「お前も、狐も・・・・俺も、弱いから、そういう目にあうんだよ」
弱いことは悪いことではない。
だが、『異質』ものが弱くては、普通に生きることが出来ないのが世の常だ。
身をもって、俺はそれを知っている。
「・・・・」
「でも、弱い奴には、弱いなりの、戦い方がある」
「・・・・・・・・俺にもできる?」
「ああ」
「こんなでかい里でも、俺が弱くても、反撃できる?」
「ああ」
ナルトは俺の右手を無理矢理掴みあげて、握り締めた。
多分、強引だけどこいつなりの『握手』なんだろう。
笑いながら俺は握り返した。
「「同盟成立」」
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