土方の死の縁からの生還のおかげで、再び騒がしかった場も静まった。
「・・・・とりあえずさぁ、最初から説明してくんねぇ?」
「ま、しょうがねーですね・・ちょっと最近暇だったんで日常にミステリ要素を入れてみたんです」
「総悟がどうしても名探偵をやりたいとか言い初めてなぁ。俺が犯人役でトシが被害者役だったんだ」
「そんなくだらないことで人一人殺さないでくださいよ・・」
「いやー、トシは横になってるだけでいいって言ったから・・・まさか本当に死にかけるとは・・」
近藤が元気の無い口調で喋る。
どうやら、このよくわからないミステリごっこに土方を参加させたのは近藤らしい。
元気の無い彼を神楽がよしよしと頭を撫でて慰めてやっている。
が、いつまで経っても泣き止まない近藤に無表情で神楽は頭突きをする。
白目をむいてぱったり倒れる近藤。
だが誰も見ていないのでその行為をつっこんだりはしない。
「ふむ・・・・でも山崎の持ってきた茶菓子が原因なのは確かなんだろうな・・」
「や、やっぱそれでしょうかね・・・」
山崎はびくびくとした様子でせわしなく動く。
自分は本当に何もやっていないのだ。誰だって濡れ衣は被りたくない。
「じゃあもうめんどいからお前犯人でいいんじゃね?」
「いやよくないですよ坂田さん!!!」
「坂田とか呼ぶんじゃねぇよ!!なんか阿呆っぽいじゃん!!!」
「てめぇ全国の坂田さんに謝れぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「山崎の癖に生意気なんだよ!!」
「はぁ・・・銀さんも山崎さんもやめてくださいよ・・・・」
新八はとりあえず銀時を押さえ込む。
その様子を見ていた沖田は顎に手を当てて考え込むような素振りをする。
「ふむ・・・・・なあ山崎」
「な、何ですか?」
「ここは真面目に土方さんを殺そうとした犯人を突き止めておくべきかねぇ」
「そ、そうですよ!よく考えてみたら、誰かは本当に副長を殺そうとしたんですよね!?」
すっかり忘れられていたその事実に、山崎は急に青くなる。
もし、これが攘夷志士テロの一種であったら・・・・
真撰組の副長がやられた、というのは隊士の士気にも関わってくる。
「ってか犯人おめぇでいいアルよ」
ふん、と鼻で笑う神楽。
「てめぇは黙ってろクソチャイナ」
黙って自分の持っている傘を沖田に向ける神楽。
同じく刀を神楽に向ける沖田。
「隊長〜、もうやめてくださいよ!それより犯人を・・・・」
「・・・ちっ、しゃーねぇな。じゃあとりあえずおめぇから尋問」
「私は無実アル」
いきなり疑いの矛先を向けられてむっとした表情で応戦体勢に入る神楽。
神楽
被害者との関係:顔見知り
動機:特になし
「・・・いや、まあ普通に考えて神楽と多串くんに接点あるわけねぇしなぁ」
頭を掻きながら銀時は山崎の報告書を見る。
「動機なんていくらだってでっちあげれるぜぃ?」
「いや、でっちあげちゃだめですよ隊長・・・」
山崎は沖田につっこみを入れながら筆を走らせる。一応事件として記録しておくらしい。
軽い質問で、既に沖田と神楽は一触即発の雰囲気であったので深い探りはいれなかった。
近藤勲
被害者との関係:上司兼友人
動機:交友関係のトラブル?
「・・・まぁ、何ていうか・・・」
「局長に限って、って感じですもんねぇ」
「そんなにゴリラって慕われてるの?」
山崎は銀時の純粋な問いに苦笑しながら答えた。
「そんなこと言ったら切りかかる人間がいるぐらいには、慕われてますよ」
「・・・・・・・何綺麗にまとめてんだよ山崎のくせによぉ!」
「何なんだよさっきから、そのどっかで聞いたことあるような台詞は!!!?」
「ドラえもん知らねぇのか!!ジャンプ馬鹿にすんじゃねぇ!」
「はい、銀さんもうマジで絡むのやめましょうね〜。大体ドラえもんはコロコロです」
「そうある、山崎なんてパン作らせとけば無問題ネ!」
「神楽ちゃん・・不二って苗字だからって必ずしも家がケーキ屋じゃないのと同じ原理だよ・・・」
坂田銀時
被害者との関係:恋人(自称)
動機:痴情の縺れ
「ってか銀時の旦那は土方さんとお付き合いしてたんですか」
「実はね・・・・多串くんが隠したいって言うから今までやってきたんだけど」
その言葉に、神楽と沖田は鼻で笑う。
こういう時だけ気が合うのも中々問題がある。
「銀ちゃんに恋人なんて出来るわけないね」
「旦那ぁ、今度薬物検査でもしやしょうか?あ、それとも健康診断の方がいいですかぃ?」
山崎退
被害者との関係:部下
動機:カッとなってやりました
「・・・・っつか何で俺だけ動機のコメントが過去形なんっすか!!?」
「えー・・・だってもう犯人決定だろ」
「うん、一番しっくりくるネ」
「山崎だし」
「そうそう、山崎だしね」
「あんたら意味わかんねぇよ!!」
虐め甲斐があるのか、銀時たち三人に集中攻撃されている山崎。・・・・哀れ。
定春
被害者との関係:顔見知りのペット
動機:本能
「動機も問題だけどさぁ・・・・大体定春ここにいないじゃん!!」
「今家でぐっすり眠ってるヨ」
「・・そういえば、動物が犯人って推理小説ありましたよねぇ」
「あ、山崎さんも心当たりありますか?あのポーの・・」
「新八くんも読んでたんだー。うん、あれってそうだよね!」
「ええ。あの意外性が僕好きなんですよ」
「うんうん・・いいよねぇ。こう、良い意味で裏切られるっていうか・・」
「そこ、何ミステリ談義に花を咲かせてるんでェ」
新八と楽しげに話をしている山崎に、沖田は思いっきり拳で殴る。
完全に八つ当たりである。
「・・・・ふむ、やっぱりここは山崎が犯人ということで」
「そうだな・・山崎くん、ちゃんと更生して戻ってくるんだよ・・・」
「ちょっと、今までの事情聴取とか全然意味を成してないじゃないっすか!!」
沖田と銀時の言葉に慌てる山崎。
こんな大雑把に犯人にされてはたまらない。
沖田はため息をつく。
「はー・・そろそろ飽きたしな。じゃあいっちょ事件解決しますかィ」
「え、沖田隊長・・犯人がわかったんですか?」
「おう。まあ、ここは探偵らしく結論を遠まわしにして説明するか」
いらない気遣いは完璧である。
一同を見回し、沖田は口を開いた。
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