最近、異様に視線を感じる。
うちの親がいるとそうでもないんだが、
一人になると、かなり・・。
最初はてっきり、一昨日の忍者たちが目をつけてるのかと思ったんだが、
それにしては数が多い。
いくらコケにされたからって、ガキにここまで拘るはずねぇしな。
人が縁側で涼んでるってのに、穴が開くほど見られている。
休めねぇし、なんか嫌だったからとりあえず正体を見破るために人気の無い公園に散歩に出かけた。
案の定、ついてきてくれている。
ベンチに座るとご丁寧に正面から現れた。
「・・・・・何の御用でしょうか?」
多分、中忍だろうおじさんは、ぎっと睨み付けた。
おいおい、滅茶苦茶恨んでるし・・何したっけ?
この前の男たちとは違うみたいだけど。
「狐め・・」
苦々しく呟いたと思うといきなり蹴りを食らわせてきた。
勿論、避けたぜ?
座っていた木製のベンチは気の毒に木っ端微塵。
・・狐?なんだそりゃ。俺が飼ってるのは鹿だぜ?
ってちょっと、まじで殺気立ってるし。
そこまで恨み買うようなことはしてねぇぞ!
俺は隙を見て逃げ出した。
変な人違いで殺されちゃたまんない。
最近、ちょっと変わったことがある。
俺の元部下の性格が豹変した。
元、っていうのは色々あってな。
ぶっちゃけ、書類を偽造したり依頼者の金を横領していた男を上に突き出したんだ。
免職されていたが、最近別口の仕事で何度か会った。
今まで、口では謝罪の言葉やなんやらを言いつつ凄い恨みの篭った目で見られていたんだが、
ここ数日はすごい機嫌がいい、というか楽しそうにしている。
同僚から聞くと、人と話すことが多くなった、明るくなったという。
よく中忍、上忍を誘って飲み屋で喋り捲っているらしい。
・・・いや、そこまでならむしろ良かったな、で終わるんだが・・
どうも嫌な予感がするんだよなぁ。
俺に笑顔で話しかけてくるあいつは、はっきり言って気味が悪い。
今度問い詰めてみようか・・・。
最近、なんか周りが変わった。
今まで俺に暴力を振るっていた奴らがいなくなった。
存在が、って意味じゃない。
この前仕事してるの見かけたし。
ただ、俺のことを眼中にいれなくなったっていうか、
別のものに気を取られているようだった。
里人の対応は今までと殆ど変わらないが、
忍びの対応がごく一部に限りちょっと変わった。
何でだ?
相変わらず化け狐は毛嫌いしているのに、
何故俺を蹴らない。
いや・・別に蹴られたいわけじゃねぇけどさ。
あんまり変化が急激で、ちょっと怪しい。
いつからだったか・・一昨日?
そういえば、あん時は俺と同じくらいの子供が助けに入ったんだよな。
ちょっとびっくりした。
ってか、あいつの動きに驚いたな。
あの動きは良かった。
まだ日常生活だって一人じゃ送れない年のくせに
クナイの使い方や飛び方は忍者としてやっていけるもんだった。
ただの子供じゃないとは思うが・・・まさかそれと関係あったりして。
いや、それはない・・・でも一応調べとこうかな。
あの顔に似た上忍は知ってる、多分そいつの家族だと思う。
よし、情報収集すっか!
俺はアカデミーで働いている。
といっても教師じゃない。
ただの雑用。使いっぱしり。
三ヶ月前の俺は暗部としても勿論、
中忍から上忍に昇格確実でまさに順風満帆に生きていた。
なのに、だ。
俺の上司である奈良上忍が俺が金を横領した、と上に報告しやがった!
そのせいで、俺は上忍試験を受けられず・・しばらく謹慎処分を受け
こうして俺より格下連中とガキにもわかりやすく忍者の心得をまとめたプリントを作成しなきゃいけねぇ。
・・・・まぁ、ぶっちゃけ屈辱だった。
いつか、奈良上忍に仕返ししてやろうかな、って程度には思ってた。
そんな時、面白いもんを見ちまった。
あの奈良上忍の息子が忍びに囲まれていたのを。
こっそり木の上から覗いて状況を把握してみたが・・
あの化け狐をどうやら奈良上忍の息子がかばっているらしい。
・・・・・・・・・・・・つまらん。
だがこのままいけば一発ぐらいぶん殴られそうなのでそれを期待して覗きを続けた。
案の定、あの単細胞みたいな男が拳を上げた、
・・・・・・・が、なんとあの息子、クナイで応戦しやがった!
しかも木から木へ飛び移って・・分身?
こりゃー、面白いもん見つけちまった。
あの年でそんなことできちまったら天才っつーもんだろ。
「・・人間じゃねぇって!」
そんな声が下から聞こえた。
あの小さな子供にいいようにあしあらわれた奴らだ。
自分たちが手こずったのは相手が九尾の力を持っているからなんじゃないか、と。
阿呆だ。そんなわけねぇだろ。
・・・・・・・・・いや、逆に利用できる。
そうだよ、あいつを九尾に仕立て上げれば俺が何もせずとも
奈良上忍にダメージを与えることができるじゃないか。
よし、この噂・・広めてみるか。
手始めにこいつらに言っておかんと、な。
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