「・・・・・・ん」
ことりことり。
規則的な心地よい音と、食欲をそそるいい匂い。
陽によく当たったふかふかのシーツに包まれて、
ナルトは覚醒しかけた意識をまた眠りにずるずると落とす。
「・・・ってそんなことしてる場合じゃないしっ!!!」
叫びながら上半身を勢いよく起こすが、周囲はしんと静まっている。
どうやら、この部屋には自分しかいないようだ。
だが調理されかけの朝食といい、家主の不在は一時的なものだろう。
「飛行石・・・・・は盗られてないな」
追っ手に捕まった可能性は低くなったが、それでも油断できない。
ここは何処だろう。というか、今自分はどういう状況に置かれているのだろう。
落下スピードがあまりにとろいからって、寝るんじゃなかった!
ぐるりと室内を見回す。
所狭しと無造作に積まれた書物には
よく理解できない言葉がびっしりと書かれたメモが張られていた。
(本が好きってレベル、超えていないか・・・?)
キッチンの食器の数を見る限り家主は一人暮らし。
壁に適当にかけられた服は男物ばかりで、しかもサイズ的に子どもだ。
自分でも着れそうな大きさで、もしかしたら同い年かもしれない。
今のご時勢、孤児なんて珍しくも何とも無いけれど
生活感はあるのに子どもらしさが無い違和感。
開け放たれた窓からは整然とした美しい町並みが見下ろせ、
顔を出すと白鳩の群れが目の前を横切った。
しかも、トランペットのメロディつきで。
「・・・・・上に、いるのか」
さて、どうしようか。
確かに部屋には、上に続く梯子があった。
このままこっそり消えた方が、
多分相手にも迷惑のかからない最善の方法なのだろう。
ナルトは窓から身を離し、机どころか床にまで侵食した
大量の紙の山から小さなメモ書きを一枚、そっと抜き取った。
「問題は、なーんで町暮らしの普通の子どもが
ラピュタのことを知ってるのか、ってことなんだよね」
もし空から落ちるところを見られているならば、
ラピュタを知る者としてこの飛行石は喉から手が出るほど欲しいだろう。
それでも今こうして監視もせずペンダントごと自分を放置する家主に、
ナルトは少し興味を覚えていた。
「ってわけで、ナルト、行っきまーす」
060806:見るに耐えないので書き直し
050325:作成
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