「・・・・四代目?」

シカマルの聞き返す声に、男ははっとしたような顔をする。
苦笑と自嘲が混ざった表情。
「すまねぇすまねぇ・・人違いにも程があるな。
 おぬしたち・・ここのやつらじゃねぇなぁ?何でこんなとこに・・・・」
「こんなとこで悪かったな」
男の後ろからぬっと不機嫌そうな顔を突き出す綱手。
「げ、綱手」
「全く、おまえも仕事が沢山あるだろう・・・・
 ああ・・こっちの黄色いのがナルト、黒いのがシカマルだ。
 今日からここで働くことになった。シカマルの方はあんたのとこに行かせるから」
「お・・・おお」
早口で言われる言葉に男は曖昧に頷き、後ずさる。
シカマルの側まで来たので小さい呟きが聞こえた。
「・・全く、綱手は早口で何でもかんでも言うからこんがらがってしょうがない・・」
「・・・・・あの、おじさんは誰っすか?」
「おお、そういや何も言っとらんかったのぉ。わしゃ自来也っつうんじゃ、よろしくな!」
にかっと笑い肩をぽんぽんと叩く自来也。
海賊にしては随分とフレンドリーな男だ。
綱手は二人のやりとりを見てから、ナルトを見る。
「ほら、あんたはこっち。台所の掃除と飯の仕度だよ。
 ・・・・・汚れたら困るから服は変えるか・・ついて来な」
「はーい。また後でね、シカ〜」
「おう」
手を振りながら綱手について行くナルトを見送る。
が、立ち止まって自来也の方を向いた。
「えっと・・・自来也さん?」
「ん?」
「四代目は、俺の父親でした」
自来也の唖然とする顔を、シカマルは見てしまった。



「・・・・ねぇ、自来也さん」
「何だ?」
「四代目って・・・」
エンジンを修理していた手を止めて、自来也はシカマルを見る。
「やっぱり気になるかのぉ?」
「すっごく」
自来也は頭をかきながら黙り込む。
しばらく考え込んだ後、彼はたった一言。
「・・夜、わしはいつもここにおる」
だから、ナルトと一緒に聞きに来るといい。
自来也の目がそう語っていたので、シカマルはそれ以上聞かなかった。
軽く頭を下げて、再び自来也の仕事を手伝い始めた。


一方、ナルトは綱手に借りた服を着て台所にいた。
「・・・・何この部屋・・」
とてもじゃないけれど台所には見えない。
ぐるりと部屋を見渡して、かろうじて水道の蛇口が見つけられた。
「今までどうやってこんなとこで料理作ってきたんだよ・・・」
ナルトはため息をついて、とりあえず汚い食器を洗うことから始めた。
そうそう簡単に片付けられそうな雰囲気ではない。
「・・・・・・まぁ、奥の手があるからいいけど」
にやりと笑うナルト。どこまでもヒロインらしくない。



さして広くない廊下を、サスケは機嫌良さそうに歩いていた。
今まで当番制でやってきたきつい仕事が、
あの二人が入ってきたおかげでぐっと楽になるからだ。
特にこの船でやることなど他にはないのだが、
それでも嬉しいことには変わりない。


・・・夕飯まで一眠りでもしようと思って、偶然台所を通ったのが彼の不運だった。

「獲物発見!!!」
台所の扉がいきなり開かれ、ぐいと物凄い強い力で引っ張り込まれる。

バタン。

扉の閉まる音。


何が起こったのかわからなくなったサスケの肩を誰かが揺さぶる。
「起きろー」
「う・・・・」
意識がはっきりして、相手の顔を見る。
今日入ったばかりの金髪だった。
「金髪・・・・・?」
「ナルトだ」
「ああ・・・ってかいきなり何するんだよ!!」
「手伝え」
ナルトはしれっとした顔でサスケに言い放った。
その言葉に思わず意識がまた飛びそうになる。
「・・・っ、仕事し始めて数時間も経ってねぇじゃん!」
「こんなとこ、真面目に仕事したら一日じゃ終わらねぇもん。
 あんた床掃除してね。ほら、雑巾」
「なんで俺が手伝わなきゃいけねぇんだよ!?」
「・・・・・・・なんか文句でもあるか?」
かなり低い声でブラックオーラを漂わせながら睨みつけられる。
今までの態度とギャップがありすぎて、サスケはたじろぐ。
「諦めろ・・サスケ」
横から聞きなれた声。
「キバ・・・ってチョウジにシノも!?」
皆手伝わされていたらしい。
「チョウジとシノは快く手伝ってくれたぞ」
ナルトの一言。
キバは・・?とサスケがキバの方を向くと
首を横に振りながら虚ろな目で微笑まれた。一体何をされたんだキバ・・。
「無駄口叩いてないで早くやろうな?ほい」
雑巾を片手に握りこまされた。
笑顔で自分の要求を突き通すナルトに、海賊たちは第二の綱手の影を見た。