カタン、カタンと少しぼろくなっている階段から人が降りてくる音。
自来也はその来客に心当たりがあった。
「・・・・やはり来たか」
「・・・で、おぬしらはどこから聞きたいかのぉ・・」
仲良くちょこんと座っているナルトとシカマルに、
自来也は考え込むような素振りを見せる。
「・・あの、俺の親父は確かに四代目、って呼ばれてたらしいんですけど、
・・・あんまり俺知らないんです。親父のことも四代目って何なのかも」
ナルトの言葉に自来也は眼を見開く。
「そうか・・じゃあわしが知っていることは全部話したほうが手っ取り早そうじゃな」
「わしが四代目と出会ったのは・・丁度四代目がおぬしぐらいじゃった時の頃かのぉ」
「俺ぐらい・・・・?」
ナルトは驚いたように聞き返す。
「ああ。いきなり天から降りてきたのが四代目だったんだ」
「天から?」
「俺とシカマルの出会いと同じだね」
「そうだな」
シカマルも、空から降りてきたナルトと出会ったのだ。
つい最近のことなのに、まるで遠い過去のことのように思えてしかたない。
「やつは天空の城・・ラピュタというところから降りてきたらしくての。
わしが最初に出会ったからというか・・・・まぁ、しばらくは一緒に暮らしていたんじゃ」
「一緒に暮らしてたんですか?」
「ああそうだ。人と全く変わらないように見えるが、やはりちょっと常識が抜けていてのぉ。
数ヶ月もすりゃ大分馴染んだが・・・」
遠い目で明後日の方角を見る自来也。
何があったか知りたいと言えば知りたいが、聞かないほうがいいのかもしれない。
「五年ぐらい経って、あやつは世界を回って見たいと言い出して、出て行ってしまったんじゃが」
「じゃあ、俺と自来也さんは面識があったってわけじゃないんだね」
ナルトの言葉に自来也も頷く。
「じゃあ、それ以来その四代目さんとは?」
「いや、それからしばらくしてあやつがわしに会いに来おった。
・・・・それが、『四代目』という名の理由なのだがな」
「どういうこと?」
ナルトが首を傾げる。
シカマルも話の続きをに興味を示している。
「そもそも『四代目』とは何の四代目かぬしらは知っているか?」
「知らない」
「・・確か、火影・・でしたよね」
シカマルの答えに、自来也は少し驚いた表情。
「まさかその年代で知っている者がおるとはのぉ・・・
その通り、四代目とは火影の四代目のことじゃ」
「火影って何ですか?」
「・・・昔は今と違って各地で戦火が上がる悲惨な時代があったんじゃ。
それを少しでも収めるために作られたのが火影という地位なんだが・・・・」
自来也はそう言いながら眉を顰める。
聞いている分には、火影とはそんな顔をするようなものではないだろうに。
「ナルト。火影は確かにその話だけなら、英雄であり、尊敬されるべきもんだろうな。
・・・・だけどそうじゃねぇんだ」
シカマルがナルトの心の疑問に、言葉を濁らせながら答える。
どういうことか、そう聞こうとすると自来也が話を続けた。
「そいつの言うとおりだ。火影が恐れ慕われるわけ、それは火影が英雄的存在だからだ。
どんな悪や災いとも戦い続け、勝つからだ。
だが火影は常に一人だ。世界の秩序を乱すもの、それが軍であろうが国家であろうが
一人で戦わなければいけない・・・・それがどれほど辛いことか、わかるか?」
並大抵のものでは、火影についてもすぐに死んでしまう。
火影火影と崇めた称えられても、問題が起これば背中を押され一人でいかなければならない。
「・・・実際のところ、火影という称号ができてから二十年ほどしか経っていないんじゃ・・」
その間にもう四代目。
たった二十年で四人もの人間が死んでしまう・・・地位。
「俺の親父は・・・・その火影だったのか」
「ああ、だからおぬしは誇りに思っていい。四代目を父に持てたことを」
あの親ばかが自来也の言うような凄い人だとは・・到底思えないナルト。
だが自来也の言葉には嘘の欠片も入っていない。渋々頷く。
「自来也さん・・じゃあ、俺の親父は死んじゃったけど、五代目っているの?」
「いるはずじゃ。火影の証は前代がいなくなると自分で次の代の火影のところに現れる」
「へ?自分でって・・」
「特殊な術が施されておるんじゃ。だから次にふさわしいと思った火影のところへ、
その証独自の基準で選んで出現するらしい」
「・・・親父と同じような人がいるんだ・・・・」
ナルトが悲しそうな顔をするので、自来也は慌てて取り繕った。
「あ、安心せい!今は四代目たちのおかげで安定した世界になっておる。
昔に比べれば命の危険なんてそれほど無い!・・・・はずじゃ」
「・・・・・そっか!ねぇ自来也さん、俺の親父の話もっと聞かせてよ」
「おお、それぐらいなら喜んで、だ」
ナルトの顔が明るくなったのを見て自来也は落ち着いた。
何せ、ナルトが悲しそうな顔をしたとき
不機嫌そうな顔でシカマルがこちらをじっと見ていたのだから。
・・・・案外、ナルトの一方通行では無いらしい。
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