見張り台に登ったナルトとシカマル。
シカマルは前を、ナルトは後ろを。
背中越しに伝わる体温がくすぐったかった。
「シカマル」
「・・・・何だ?」
後ろから聞こえた声に、シカマルは聞き返す。
振り向いてもよかったが・・・何故か、ナルトの今の顔を見てはいけない気がした。
「俺、ラピュタに行くのは・・・・・・少しだけ怖い」
「・・・・・・」
「親父に教わったまじないで、あんな風になるなんて」
「あのロボットのことか?」
「うん・・・・」
暇だった。助けて欲しいという気持ちもも全くというほど・・ないわけでもなかった。
それでも
「俺のせいで、あのロボットは死んじゃったんだよな」
シカマルは相変わらず無言だ。
それが、彼なりの相槌なのだろう。
「他のも沢山、まじないは教わったんだ。病気を治したり物探しをしたりするもの・・・
絶対使っちゃいけない言葉だってある」
「使っちゃいけない・・・?」
「滅びのまじない。良い言葉に力を与えるんだったら、悪い言葉も知らなきゃいけねぇんだ」
まあ、ぶっちゃけ滅びのまじないは無理矢理親父から聞き出したのだが。
「ナルト」
「・・・・・何?」
「ラピュタロボは、本望だったと思うぞ。
王族を守るっつう最高の名誉を持って・・・逝くことができたんだから」
「・・・な、んで・・俺が王族だって」
「おまえが前教えてくれた秘密の名前、あれって王族が継ぐやつだろ・・
俺の親父はラピュタを調べていたから」
「・・・・そっか。ラピュタロボ・・・・・名誉、だったかなぁ」
「もしあのロボットに報いたい気持ちがあるなら・・胸張って生きろよ。
命がけで守った甲斐があったって思えるような、さ」
「・・・・・・・・・ありがと、シカ」
「・・おう」
何故かその言葉は、ナルトの心にすんなりと染み込んだ。
まるでシカマルが自分自身に言い聞かせるような・・そんな響きがあったから。
「・・・でも、シカマルごめんな。俺のせいで海賊になってくれたんだろ?」
「あー・・・・まあ、大丈夫じゃねぇ?俺海賊になるつもりは無いし。
綱手さんたちだってわかってくれるさ」
とても短い付き合いだが、綱手の粗暴な行動の裏に
自分たちを心配する情深さがあることはよく伝わってくる。
「そうだね・・綱手さん実はすっごい良い人だよね・・・・」
「本当になぁ・・・」
((まあ、万一抜けるの反対されたら海賊自体潰しちまえばいいし))
性格もあまり似ていない二人だが、
こんな時だけ意見はぴったりと合っていたりする。
「全部片付いたら、ナルトの住んでた山奥の谷にも行って見たいな」
「うん、俺の住んでたとこ、すっごい綺麗な見晴らしだから絶対来いよ!」
「ちゃんと全部片付いたらな」
「楽しみにしてる、いっぱいご馳走するから!!」
「・・・・・ナルト」
「どうしたの、シカマル・・」
いきなり、がらりとシカマルの声が真面目になった。
ナルトが後ろを振り返るとシカマルは身を乗り出して下を覗いていた。
「船の下・・・・・・あれは、軍のだ!!」
すぐさま、横に付いていた通信機で海賊たちに知らせるシカマル。
ナルトはゆっくりと船下にある軍艦の影を睨みつける。
シカマルと二人きりの時間をいつもいつも邪魔する軍。
「・・・・やっぱりあの時(階段突き落とし)ちゃんとカカシ殺っとくべきだったかなぁ」
ぼそりと物騒なことを呟くナルト。
幸いなことに、海賊たちに今の事態を報告しているシカマルの耳には届かなかった。
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