「ちっ・・まさか軍艦がこんな近くにいたなんて・・」
綱手はシカマルの報告を聞き、自室をすぐに出る。
他の海賊たちも同じ報告を聞いていたので綱手と同じように操舵室に集まっていた。
「・・・船長、これからどうします」
「ここで振り切られたらおしまいよ」
綱手は部屋に備え付けの通信機を手に取った。
「シカマル、聞こえてるかい?」
『ああ、聞こえてる』
「これからあんたたちのいる見張り台だけ船から切り離して軍艦を追跡するよ」
『どうすればいい?』
「その見張り台はタコになってるんだ。受信機の横にハンドルがあるだろ」
『あった』
「時計回りで回せ」
数秒時間を置いて綱手は再び指示を出す。
「回しきったら今度は上のハンドルを同じように回すんだよ。それで翼が開く」
『・・・・・ああ、開いた』
「ならワイヤーを晴るんだ。操縦は適当にやってりゃわかる!!」
『・・・・・・・アバウトすぎです船長』
脱力気味のシカマルの声。だがそれ以上文句は言わない。
綱手は机に広げた地図を確認しながら更に言葉を続ける。
「そっちにナルトがいるね」
『はーい、船長!俺ここにいていいですよねぇ?」
ナルトの名前を出すといきなり声が変わった。後ろでシカマルのたしなめる声が聞こえる。
あまりの能天気な声に綱手は僅かに眉を顰める。
「どうせダメだっつったっているんだろう・・」
『うん』
「ったく・・上に上がったら通信機は使えないから、そこらへんに電話がある・・」
綱手が説明する途中にいきなり電話のベルが鳴り響く。
まさか、と思いつつ綱手がそれを取ると
『これでいいんだろ?』
明るいナルトの声。
「・・・・・上出来だよ」
「すげぇ・・・」
二人のやり取りにキバが感嘆の声をあげる。
確かに、まだ海賊船に乗って一日も経っていないのに
ここまで使いこなすことが出来るのは尊敬に値する。

「ナルト、船から切り離すぞ」
「はぁい。うおぁ!!」
シカマルが見張り台だったタコを船から切り離すと突風に晒されて激しく揺れる。
ナルトは縁を掴んで何とかバランスを保った。
「そこにロープがあるから、俺とナルトの身体を縛ってくれ!」
「わ、わかった」
シカマルに言われて、ナルトは隅にまとめられていたロープを取る。
何十も巻いておけば大丈夫だろう。
これで事実上・・・・・一心同体。
緊迫した状況にも関わらず、ナルトがにやりと不穏な笑みを見せたが
初めてのタコの操縦に手一杯のシカマルは気づかない。
いい加減シカマルも感づいたほうが身のためな気がしないでもないのだが・・・
「あー・・・ったく、俺はこういうのやったことねぇのに・・」
「シカマル・・大丈夫?」
「多分な。流石に墜落させるわけにゃいかねーし・・ナルトも軍艦探してくれよ」
「もっちろん!・・・・でもいないよねぇ、雲に隠れてるのかな」
『油断するな。前方にいるとは限らないんだから』
電話から綱手の声。
二人は小さく頷いて周囲を見渡す。
夜明けの太陽が右から射し始めている。
「・・・・船長、俺たちはどの方角に向かっているんですか?」
『太陽の方角と飛行石の角度を照らし合わせて真南に進んでいるよ・・って説明したじゃないか』
「み、南に進んでいるなら、夜明けの太陽は左に見えるはずですよね・・?」
『ああ・・・まさか』
「俺たち北に向かってるみたいです。風のせいで進路が流されてる・・」
目的地と逆方向に進んでいては、そりゃ軍艦なんて見つかるはずが無い。

「くっ・・間逆に進んでたなんて・・・・」
綱手は地図を広げた鉄製の机を叩く。
何が原因かはわからないがコンパスは役に立たないようだ。
「あれ、でもバカボンのパパは『西から昇った おひさまが 東へ沈む♪』って・・
 だから問題ないんじゃないかぁ?」
バカボンの歌を歌い始めたキバを、綱手は容赦なく拳で殴る。
「・・・・キバ、それ以上もう発言するな」
「・・むがっ」
たんこぶを作って少し涙目のキバの口をチョウジが塞ぐ。
仲間思いのコンビプレーだ。
『船長!!』
「何だシカマル」
『巨大な雲がせまってき・・いや、俺たちの方が引き寄せられてます』
「雲・・・・?低気圧の中心か・・」
引きずり込まれれば船は木っ端微塵だ。
「全速力で逃げ切るよ!舵を取れ!!」
「「「「はい!」」」」
海賊たちはそれぞれの仕事をてきぱきとこなす。
綱手はそれを一瞥して深く息を吐いた。
「・・・・・ったく、次から次へと・・一体どうなってんだい・・」