「綱手、このままじゃエンジンが燃えるぞ!!」
「んなことわかってる!そこを何とかしな!!!」
「んな無茶な・・・・」
自来也は頭をかいて困った顔をする。
だが、それは綱手も同じ。
これからの自分の一挙一動で船員全体の運命が変わってしまう。
プレッシャーでどうにかなりそうな頭を必死に切り替えて、最善の道を探す。
自来也もそれはわかっていたので、黙ったままエンジン室に早足で戻っていった。



一方ナルトとシカマルはどうすることもできず、
タコに乗ってじっと雲の渦を眺めていた。
「綺麗・・・・」
「あのなー・・あれに飲み込まれたら俺たち無事に帰ってこれねぇって」
ナルトの言葉につっこみながらも、シカマルも雲から目を離せなかった。
「でも、変だよな。何でこの雲左回りなんだろう」
「・・・どういう意味だ」
ナルトは小さく呟く。
それを目ざとく聞き取ったシカマル。
「だって、低気圧・・台風とかは右回りなんだろ?」
前、良純さんが解説してたもん。
その台詞に、シカマルは眼前にある雲を改めて見た。
確かにこの雲は左回りに回っている。明らかに、これはおかしい。


『シカマル、向こうは逆に風が吹いているんだぞ』

昔、自分の父親が言った言葉が急に頭に浮かんだ。
思い出せ、あの親父は他に何て言っていた・・・

『親父・・・母さんに安静にしてろって怒られたばっかだろ』
『あっはっは!シカマル、このことは母さんに内緒だぞ?』
地下の書庫。
松葉杖をつきながら親父は自分の撮った写真をルーペで解析していた。
『・・・・ラピュタ、どうだった?』
ガキだった俺は、平静を装ってそう尋ねた。
興味津々だったことを隠そうとして、でもバレバレで。
『おう、すげぇでかかったぜ?古代から存在してただろうに
 外観からだけでもかなり進歩している文明だったことがわかるぐらいだ。
 ただ・・・そこらじゅうの壁に大きな爪あとみたいなもんがあるのが気がかりだな。
 あれは人の手でつけられるもんなのか・・何故ラピュタが滅んだのかわかればきっと・・・』
親父は土産話から一転、そのまま自分の思考にドボン。
だが珍しくすぐに戻ってきて、再びラピュタの話をしてくれた。
だけどその話が本当に長ったらしくて、最後のほうは聞いてなかった。
やっと話し終えたと思ったら、親父は思い出したようにぽんと言った。
『シカマル、向こうは逆に風が吹いているんだぞ』
いきなりの脈絡の無い台詞に思わず聞き返す。
『・・・・・は?どういう意味』
『ラピュタは逆に風が取り巻くんだ、一見普通の低『あーなーたっ!!!』
ばたんと扉を勢いよく開けて入ってきた母さん。
『あー・・・母ちゃん』
『あれだけ安静にしろって言ったのに、何考えてんの!!』
ごきっと、何か恐ろしい音がした。
母さんの右拳は凶器だな・・・親父が倒れた。
それをずるずると引きずっていく母さん。南無・・・・


その情景があまりに印象強すぎて、親父がさっき言ってたことはすっかり忘れていた。
でも、親父は確かに言ったんだ。
『ラピュタは、逆に風が取り巻く』


「船長!!」
俺は横にあった電話を耳にあて、大声で話しかける。
『うっさい!・・今度は一体どうしたシカマル』
「ラピュタは、あの低気圧の中にあるんだよ!!」
『・・・・・・・・・・・それはどういうことだい』
「俺の親父はあの中でラピュタを見たんだ!」
『馬鹿な・・入ったとたんバラバラになっちまうよ!!』
「綱手さん、そんなこと言ってられないみたいだよ。後ろに軍艦いるし」
『げっ、この忙しいときに!』
ナルトが電話に割り込んで報告する。
俺はすぐ後ろを振り返ったが軍艦の影は無い。
飄々と嘘をつくナルトの顔を凝視すると、ウィンクと笑顔を返された。
・・・・・・俺の、援護をしてくれるのか。
覚悟を決めて、すっと息を吸いこんで電話に向かって声を張り上げた。
「船長、行ってください!俺の親父は、(めちゃくちゃ重傷だったけど)帰って来た!!」
『・・・っつ、しゃーない、行くぞラピュタへ!』
おー、と電話越しに海賊たちの声が聞こえた。

「・・・・ありがとな。ナルトのおかげだ」
あの時軍艦がいると、綱手は思ったからこそ決断をしたのだ。
ナルトは首をふる。
「俺、シカマル信じてるから。だから、絶対ラピュタはあるんだよ、あの雲の中に」
「・・おう・・・絶対、ラピュタに行こうな」
「うん!」
元気に頷くナルト。その眩しい笑顔に、俺もつられて笑った。
でもちゃんと覚悟してる。
ラピュタに着いたら・・・・謝ろう。例え一生恨まれても。