「う、うわぁぁぁ!」
嵐の中に突っ込んだせいで海賊船の振動は殊更激しくなる。
つい情けない声を出してへたる海賊たちを綱手はぎろりと睨んだ。
「くぉら、そんなとこに倒れてないでさっさと仕事しろ!」
「綱手・・・こんな揺れとったら無理もないぞ」
「じーらーいーや!お前何でこんなとこにいるんだ」
エンジン室を任せていたはずの自来也がのほほんと普通に
自分の隣にいて、更に苛立ちは増す。
それを諌めるように軽く息をつく自来也。
「落ち着け。エンジンは俺が手を出すまでもねぇから大丈夫だってぇの」
「・・・・なんで」
「・・・・・いや、その・・壊れた」
しん、と操舵室が静まった。がたがたと風に揺られる音だけが聞こえる。
普段は賑やかで明るい海賊船なので、これは大変珍しい。
だが、そんな状況はすぐに変えられた。
大きな悲鳴とともに。


「・・・・っ、何っつうか風強すぎ!!」
「嵐のど真ん中を進んでるようなもんだからな・・!!」
海賊船の中とは比べ物にならない強風に曝されているナルトとシカマル。
あまりの強さにタコも操縦するどころか落ちないようにするだけで精一杯だ。
「・・この中にラピュタが・・・・」
ナルトは顔に吹き付ける鋭い風に目を細める。
自分の・・・・一応故郷になるのだろうか。
親父は何も言わず消えてしまったから。
ただ、親父も俺もそのラピュタの王家の人間らしくて。
でも俺は一回もラピュタなんて行ったこと無いから実感無いし。
・・・・・なのに、何でだか時々見たこともない風景が夢に出てくることがあって。
知らない町。見知らぬ服を着た人々。
・・壊されていく町。だんだん視界が真っ赤になってくる。
・・・・・多分、あの町がラピュタ。夢なのにリアルで嫌だけど。
全然わけがわからない。でもきっと・・・きっと辿りつけば何かがわかるんだ。

「「・・・っ!!」」

なんとか安定して飛んでいたタコがいきなり上昇した。
シカマルがすぐさまハンドルを回すが全然元に戻らない。
「どうなってんの!?」
「船と繋がってた綱が切れたっぽい!!くっ・・これエンジンついてないか」
「・・・つまり?」
ナルトだって馬鹿ではない。それでどうなるかわかってはいる。
でも、それでも聞いてしまうのは人の性というか・・・・。
シカマルも、まるで自分を落ち着けるために言うような・・静かな口調で呟いた。
「風に流されるままに、だな」
「・・・やばいじゃんっ!!!もー・・風の馬鹿野郎!!!!」
どうしようもないが叫ぶのはタダだ。
ナルトの低気圧に対する悪態は、轟々とした渦に飲まれていった。





「あのー・・・低気圧の渦が迫っているんですが」
「大丈夫大丈夫、飛行石の光はそっちに差してるから、真っ直ぐ進んで?」
不安げに様子を探る兵士に、カカシはにっこり笑う。
ふと、涙目の兵士の向こう側に人影が見えた。・・見覚えがある。
「ほら、さっさと部屋に戻って戻って」
「・・・・失礼します」
不安感を拭えない視線を送られた。
だがカカシはそんなこと全く気にせず、奥の人影に近づいた。
「やっほー、ハヤテ」
「・・・どうも、カカシ大佐」
「ゲンマとは別行動?」
「バラバラで行動したほうが効率がいいんで・・・ところで」
きょろきょろと周囲を見渡し、誰もいないことを確認するハヤテ。
それにつられてカカシも周りを探るが、人の気配は無い。
「カカシ大佐にいくつかお聞きしたいことがあるんですが・・」
「何?」
ゲンマはよく喋る男だが、対照的にハヤテは無口な男だ。
付き合いは悪くないが積極的に話しかけてくるタイプではない。
「カカシ大佐は、軍のラピュタの研究に携わって何年目ですか?」
「んー、二年前かな。俺結構新参者なのよ」
「・・・それ以前に大規模な事故があったことはご存知で?」
「ああ、知ってる。なんかラピュタの研究してた軍の施設が
 別の研究で調べてた爆弾の爆発で倒壊したってやつでしょ?」
そういえば自分が入ってきたときに、危険対策マニュアルみたいなものが配られていた。
「ええ・・・・・そう、事故です。それには関わってないんですね?」
「だってあれは俺が来る一年ぐらい前のことでしょ〜」
ハヤテはじっとカカシを見つめる。
まるで嘘か真実かを見極めようとするようで、少し居心地が悪い。
「・・ありがとうございました、他の人が来たらやばいので失礼します」
「・・・ってか、一体ハヤテは何が聞きたかったの・・・」
「まぁお気になさらず。では」
全く意図のつかめない質問をぶつけられ困惑するカカシを置いて
ハヤテはさっさと去って行った。
本当に、何だったんだろう。


「カカシさん、あの『事故』には関わってなかったみたいです」
カボチャを足で転がしていたゲンマにケリを入れるハヤテ。
人が軍の情報収集をしている間に何をのんびりしてんだ、という恨みも込めて。
「ふーん・・・なら別にいいんだけどな」
「ええ。あ、それともうすぐラピュタに着くそうですよ」
様子を探りに行ったときにカカシがそんなことを言っていた。
ゲンマは白い息が吐く。
寒くなってきたので毛布を肩にかけて包まった。
「ってか何で冷凍室に隠れなきゃいけないんですか」
「だって一番見つからないだろ?」
「・・・・・そりゃそうですけど」
確かに見回りなんてほとんだ来ないが、ラピュタの発見が遅れればこちらの身が危ない。
ハヤテも床に放り投げられた毛布を拾い上げくるんだ。
「・・・後ちょっとですね」
「ああ、もうすぐでラピュタだ・・・・九尾にはお会いできんのかねぇ」
「ってかいなかったら本当、骨折り損ですよね」
「・・・・・・それを言うなって」