ナルくん・・・・ナルくん。

うるさい、眠いんだから邪魔すんなよ。

全く。そりゃ九尾さんのせいで身体がだるいのはわかるけど・・もう午後だよ。

・・・・・・・・・え?

ともかくナルくん・・・もう起きなきゃ、じゃないとパパがチューしちゃうぞ♪



「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「んぁ・・ナルト?どうしたんだ・・・・」
ナルトの絶叫にシカマルがぱちりと目を覚まして声を掛ける。
当のナルトは肩で息をして、額の汗をぐいと拭った。
「すっげぇ、嫌な夢見た」
「・・・・・大丈夫か?」
「うん」
「・・そうか、ならいいんだけど」
隣に寝転んでいたシカマルは立ち上がろうとするが、何かに引っ張られてバランスを崩した。
ふと腰を見ると、ナルトとロープで繋がっている。
「あ・・・ちょっと待って、固く結んじゃったから」
「おう」
再びナルトの隣に座り込んで、ロープが解けるのを待つ。
美しい草花が生えているのであまり座りたくはなかったが、しょうがない。
耳を澄ませば鳥たちのさえずりも聞こえてくる。
「・・・・・・ってか、普通にのほほんとしてるけど・・ここって」
「よし、解けた!・・・ん?ここがどうかした・・・・・って」
「「ラピュタ!!!?」」
二人は同時に叫んで、すぐそばの切り立った場所から下を見下ろした。
半分ほど水に浸されているが古代遺跡のような建物がびっしりとそびえ立っている。
思わず息を呑むほどの、荘厳で迫力のある眺めだった。
「やっぱり・・・」
「どした?」
「俺、ラピュタなんて来たことないけど・・でも見覚えがある」
「不思議だな」
「・・・・・うん」
ナルトはそよそよと穏やかに吹く風に目を細めた。
夢に何度も見た風景。
まさにこのラピュタのものと一致している。
思い出そうとしても頭の中に霞がかったようで記憶を引き出せない。
ぎゅっと手を握りこむと爪が痛いぐらいに食い込んだ。

ふと、ピコピコと聞き覚えのある音がした。
後ろを振り返ると、ラピュタロボがゆっくりと近づいてきていた。
「ナルトの出迎え・・・じゃねぇよな」
「うん。今は飛行石も持ってないし」
何をするのかじっと観察していると、ロボは二人の横を通り過ぎたこに近づいていく。
「・・ラピュタロボ、お願い、そのたこは壊さないで」
ナルトが言い聞かせるように宥めると、その声に反応してラピュタロボはちかちかとランプが点滅する。
一旦動きは止まったが、再び動き出したこに手を掛けた。
ぐぐぐっとぎこちなくたこが持ち上げられる。
そこまで来て、初めてラピュタロボの行動の意図がわかった。
「・・・・あ」
「鳥の巣・・・だ」
たこがどかされた場所には木の枝の巣、更に小さな卵が三つほどあった。
「よかった、どれも割れてない・・・」
ラピュタロボは持ち上げていたたこを別の場所にゆっくりと下ろした。
二人がロボに目を向けると、再びピコピコと音を鳴らしはじめる。
「ついて来いだって」
「・・・ラピュタロボの言葉が分かるのか?」
「なんとなく」
「・・・・・ま、いいけどな」
見る限りとても平和そうな場所。
軍の存在が気にならなくもないが、少しぐらいゆっくりしても大丈夫なはずだ。


「そういえば海賊の人達大丈夫かな・・・」
「ん?どうしたのシカ?」
「・・・・いや、なんでもない」
きょとんとした表情で聞き返すナルトに適当に返事をした。
・・・まさか、ナルト・・本気で海賊さんたちの存在忘れてんのか?
「あ、見て見て!すっごいよ、なんか変な文字っぽいものが書かれてる!」
ナルトの言葉にシカマルは勢いよく顔を上げた。
輝いた眼で文字を見上げ、綺麗に識読できる部分をそっと指でなぞる。
「マジか?うわー、俺ラピュタの文字って初めて生で見た・・・!!」
シカマルの僅かな疑念は、文字を解読したいという知識欲によって見事に打ち消されていた。