「・・・・・ここは?」


ラピュタロボを追いかけて来た場所は、草花が生い茂る広場のようなところだった。
見失わないよう走ってきたが、その広場にはロボはいなかった。
美しく、静寂な広場は居心地がよく、柔らかな木漏れ陽は眠気を誘いそうだ。
中央には石碑のようなものがあったので、二人は近づいて行った。
「・・・これ、何?」
「文字が読めない。だけど花が供えられてるみたいだし、多分・・・」
墓、なんだろう。
何本も石碑の前に並べられている花。その数の多さにナルトは目をぎゅっと瞑る。
パン、ポン。
後ろから聞きなれたラピュタロボの音が聞こえた。
振り返ると、その手には数本の花が摘まれていて、
ロボはナルトが取りやすい位置まで手を下げてくれた。
「・・ありがとう、俺も供えるよ。シカマルも・・」
「・・・・・わかった」
ナルトから花を半分受け取って、シカマルも石碑の傍らにそっと供えた。
「ここにいる人達は・・・きっとよく眠れてるよね」
「・・・・ああ」
「でもこのラピュタロボは一人なのかなぁ・・」
「大丈夫、みたいだぞ。ほら」
ロボにはリスや小鳥たちが乗って戯れていた。
無機質で固いイメージのあるロボと
今のその状況が妙に似合っていて、二人は柔らかに笑った。
「確かに、大丈夫そうだね・・一人じゃないや」
「・・・・・・・ナルト」
「何?」
シカマルの覚悟を決めたような表情。
ナルトは頭の中で警報が鳴り響くのを感じた。
聞きたくない。それでも、シカマルの真剣な雰囲気に呑まれていた。

「俺は           」

瞬間、大きな衝突音が響いた。
シカマルもナルトも耳を塞ぎ、なんとかやり過ごす。
「な、何の音・・!?」
「・・向こうの方だ。とりあえず見てくる」
シカマルは石碑を離れて、周囲を確認する。
しかしナルトは立ち上がる様子は無い。
「・・・・ナルト?」
「ごめん、ちょっとさっきの音が大きすぎて耳がキーンってしてて痛い。
 すぐ追いつくから先に行っててくれない?」
頭と耳を手で押さえているナルト。
口調は軽いが確かに痛そうだ。
「・・・・・・・・わかった、遅かったら戻ってくるから」
「うん。ごめんね」

シカマルが小走りで広場を出て行くと、ナルトは石碑の前に座りこんだ。
先ほどのシカマルの言葉。
突然の大きな音で、声は全く聞こえなかったが、唇の動きで何を言っていたかはわかった。

『俺は、ナルトの親父さんを・・・・殺した張本人だ』

ナルトは膝を抱えて、顔をうずめた。
「・・一体どうなってんだよ・・・・どういうことなんだよ!!!」
バンッ、と握った拳を力いっぱい石碑にぶつけた。
じくじくと痛んできたが、それも気にせず何度も打ち付ける。
色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って、何故涙が目に溜まっているのかもわからない。
自分は、これからどうすればいいんだろうか。
確実にシカマルは、恨まれる覚悟であんなことを言ったんだろう。
俺がちゃんと聞こえてたことも・・きっとわかってる。
嫌だよ。もう置いていかないで、離れないで・・・・・行かないで!!



大分落ち着いたナルトは、ズキズキと痛む自分の右拳をさする。
「シカマルも親父も・・・・・・勝手だ」
こちらの気持ちを考えてるようで全然考えられてない。
だから勝手に置いてけぼりにするし、また俺を独りにするんだ。
涙を拭って改めて冷静に考えると、ふつふつと妙な怒りを覚えてきた。
ふと、あの親父の阿呆な笑顔が思い浮かんで、拳に力を込めた。
「・・・のばかやろーっ!!」
先ほどのと違い、明確な怒りをぶつけるために一発、思いっきり石碑を殴った。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」
「は?」
頭上から間抜けな、飛びぬけて明るい声が降ってきた。
ゆっくりと顔を上げると二本の足が石碑の上に乗っている。
更に視線を上げると、自分と同じ金糸の髪がさらさらと流れているのが見えた。
「・・久しぶりだね、ナルくん」
にっこりと、先ほど自分が思い浮かべていた阿呆笑顔と全く同じで。
上から自分の髪を優しく撫でてくる手を、ナルトはぐっと掴んだ。
「てめぇ何でここにいるんだよ阿呆親父!!!」
鮮やかな一本背負い。
ナルトよりはずっと大きな身体をしていても
見事に投げ飛ばされ、地面に身体を強く打ち付けられていた。
「さ・・・・流石ナルくん・・・・グッジョブ・・・・・・」