「・・・・で、どういうこと」
いきなり現れた父親に、戸惑いどころか殺意すら覚えているナルト。
それをわかっていながらもにこやかに笑う父。
「いやー、久しぶりだねぇ。相変わらずナルくんは可愛い!」
「生きてたんなら何で・・・」
「・・・・・・正確には死んでるんだよ」
「だって触れた!」
「あ、幽霊さんにもなれるんだよ?」
パチンと指を鳴らすと、男の身体が透けていた。
ナルトは思わず指でそっと触れてみるが、やはり通り抜けてしまう。
ちょっと自慢げな男がむかつく。むかついて殴りたいけど殴れなくて、更にむかつく。
冷静になるんだ自分!
できうる限りの精一杯の言葉で感情をぐっと抑え、ナルトはとりあえず聞くべきことを聞く。
「・・・何で?」
男は頭をかいて困った顔をした。
「んー、話だけじゃ説明しずらいんだけど・・
ラピュタの内部に行けばわかりやすいと思うから後で連れてってあげる。
とりあえずあの男の子のとこに行ったほうがいいよ?」
あの男の子、と聞いてナルトははっとした。
「ねえ、シカマルが親父を殺したって・・・・・」
怒りや驚きで半分忘れかけていたが、重要な問題だ。
もしこれで親父が『そうだ』と言ったら・・・自分は本当にどうすればいいのだろう。
・・・・・・だが、それでも、聞かずにはいられない。
「・・あれは、事故だったんだ。僕が死んじゃった原因の場所に、確かにシカマル君はいたけど、
でも彼が気に病むことじゃないし、ましてや殺したなんて言うべきじゃない・・・」
先ほどの明るい顔が一気に沈み、声も小さくなる。
ナルトは深く息を吐いた。
中々嫌なことが起こったのは事実らしいが、父親のその言葉にナルトはほっとしていた。
少なくとも、シカマルは殺してはいないのだ。敵では・・・ない。
「ほら!だったらさっさとシカマルんとこ行くぞ馬鹿親父!!
それでちゃんとそのこと伝えてやれよ!全く・・・・」
ぎゅっと胸を押さえるナルトに、男はすまなそうに笑った。
「・・・・・・ごめんね、ナルくん。よし、行くぞー!!」
シカマルは崩れた壁の隙間から、外の様子を窺っていた。
軍の兵士たちが続々と侵入してきて、先ほど海賊の一人が捕まっているのを見つけた。
このままじゃ海賊たちも、自分とナルトも捕まってしまう。
ナルトは・・もう自分を嫌って憎んでいるかもしれない。
それでも、何としても彼だけは、折角自分の故郷に来れたのだ・・軍に無粋な真似はさせない。
ひとまず逃走ルートを確保しようと、シカマルが策をめぐらしていると
「シカマルー!」
ナルトの声が聞こえた。
覚悟を決めたのだろうか?先ほどは、聞かなかった振りをされてしまったが。
「・・ナルト?」
振り返ると、こちらに向かい走ってくるナルト、その背後に張り付くように浮いている金髪の男。
何なんだあれ・・とよくよく見てみると、その顔は・・
見覚えのある・・・・・・・・顔。
「・・・四代目!?」
「はぁ・・とりあえず、死んでるけど幽霊みたいになってるわけですね」
「厳密に言えば違うけど、そんなもんだよ」
おちゃらけている四代目と、事実は受け入れたものの混乱しているナルトの言葉を
何とか繋ぎ合わせて理解したシカマル。
にわかに信じられない話だが、実際そこにいる四代目を見てしまうと信じないわけにはいかない。
「シカマル、詳しくは聞いて無いけど・・その、こんな阿呆親父のせいで自分を責めないで」
「・・・・・・それでも、俺は罪だと思ってる・・」
「・・・君たち、阿呆親父はもう決定なのかな?ひどいよぅ・・シクシクシク」
自分で涙の擬音まで口に出している四代目。阿呆にしか見えない。
だがすぐにまともな顔に戻って、シカマルと目を合わせ、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「ねえ、あのことは気にしなくていいんだよ?
あれは事故のようなものだし、君がいつまでも責任を感じて
ましてやナル君に僕を殺した・・なんて言うべきじゃないよ」
シカマルはふっとナルトの方に目をやる。
少し泣き腫らして赤っぽくなった目。何かを力任せに殴ったのか、血が滲んでいる拳。
自分は、持て余していた罪悪感を、一番最低な方法ではらそうとしたのかもしれない・・
「・・ナルト、ごめん。お前のこと、こんな風に傷つけるつもりじゃなかった・・・」
「・・・・・・シカマルが俺の親父殺したってのは?」
「・・・半分半分」
事実と、自分の後悔による誇張と。それが今の自分の精一杯の譲歩だった。
ナルトは少し不満そうな顔をしたが、すぐにシカマルにいつもの笑顔を見せた。
その微笑を見てほっとしている自分がいる。
抱きついてきたナルトの頭を撫でながら、シカマルはそんなことを考えて、柔らかく笑った。
・・・・・ほんわかムードに、隅でハンカチを噛んで涙を流しながら悔しがる親馬鹿が一人。
「ってか、そうだ。すっかり忘れるとこだったけど、ここ軍が占拠しかけてるんだった」
ふと、シカマルが呟いた一言。
ナルトと四代目が顔を上げて、急いで周囲を窺う。
「あーっ!あそこの階段まで軍人いるよっ!!」
「マジ?じゃ、あっち逃げよう、早く早く!」
幽霊な分、どこにでも素早く浮かんで動ける四代目の知らせを聞き、
ナルトは早足で反対側に行き、そちら側に兵士の気配が無いか探っている。
それを追うシカマルと四代目が隣に並んだとき、シカマルはそっと口を開けた。
「・・・・あの時は・・・・・本当にすみませんでした」
先ほどはナルトと四代目に言いくるめられるような形になったが、
やはり数年間悩み、後悔してきた罪をそうそう簡単に減じるようなことはできない。
四代目はそんな生真面目なシカマルにため息をつく。
「もう、あれは君のせいじゃないって言ってるでしょ!
・・・ナルくんも君も、幸せそうで僕は嬉しいんだから」
そう呟きながら微笑む四代目。
何と言葉をかけていいかシカマルが悩んでいると、更に言葉を続けた。
「でも、ナルくんとの交際はお父さん反対だからね?」
その言葉を言うか言わないかの瞬間、ナルトが近くにあった手頃な大理石のブロックを
片手で持ち上げて、四代目との距離を測っているのを見て、
シカマルはさっと隣の人物から離れた。
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