捕まった海賊たちは皆一つの場所に集められていた。
見張りの兵士は時々こちらを見下ろすが、大して注意は払っていない。

「まーったく、仕方ないねぇ・・皆捕まりやがって」

綱手がジト目で海賊たちを見る。
だがそうして見ている綱手の手にはしっかり手首に縄が結ばれている。
キバを始めとする子供たちは、逃げるのに疲れたのか言い返すことすらしない。
「はー・・・まさか『全員』捕まるとはのぉ」
「本当に・・・・自来也、おまえももうちょっと真面目に逃げりゃよかったのに」
「最近どーも疲れやすくなってなー・・・」
何気なく会話する綱手と自来也。
そう、自分たちは『全員』捕まったのだ。
実際軍のリストに自分たちの顔は照合されている。
だから軍はこれ以上海賊探しに人員は割かない。
これで少しは動きやすくなったろう?
綱手は、ここにいないあの二人の顔を思い浮かべて、少し笑った。

「・・・・・綱手、おまえやっぱり変わったな」
「何が?」
「少なくとも、昔のおまえなら何でもチャンスは利用してたろ?」
まだ捕まっていないナルトとシカマルを利用して、
嘘も真実も巧みに使って脱出していたはずだ。
だが、今の綱手は確かに、二人を手助けしようとしている。
「・・・まーだ、ラピュタのお宝を拝んでいないんだ。逃げ出すかってんだい」
「・・・・・・・・・・・ほー?」
明らかに面白がっている声音の主に、じろりと睨みつける。
それがきいたのか、自来也は唇を尖らせたがそれ以上からかわなかった。
「あら、これで海賊たちは全部なの?」
背後から聞こえる声に、綱手と自来也、他の海賊たちも口をつぐむ。
年は若い、女の声だ。
振り向こうかと思ったが、向こうのほうからこちら側に回りこんで顔を覗き込んできた。
「へー、小さい子も多いわね。こんなんで海賊やってけるんだ」
じゃらじゃらと階級章をつけた女。
どう見ても二十代の小娘にしか見えないが、相当の地位にいるはずだ。
ぐるりと海賊たちの顔を見回し、綱手に目を合わせた。
「私はみたらしアンコ。あんたは?」
「綱手。・・・将軍かい?」
「あたりー。さっすが、伝説の海賊綱手様ねぇ」
軍部のブラックリストに入ってたわよ、とにこやかに機密情報をくっちゃべるアンコ。
「そりゃどうも。で、何か用でもあるのか?将軍さまは」
「ええ、とっても重要な用事が。むしろ取引?」
取引という言葉に、綱手は目を光らせる。
話術には自信がある。やばくなったらこっちから取引を持ちかけようかとも思っていたが、
まさか将軍直々に言ってくるとは、嬉しい誤算だ。
「で、何かい?」
「そっちの船には、甘いものある?」
「・・・あるけど?」
「よかった!ねえ、それちょっと私に分けてくれない?軍はお菓子までは積んでくれないのよ!
 もしくれるんだったら・・・そうねぇ、少なくとも絶対に、命の保障はするわよ?
 軍の裁判でも死罪にならないよう圧力かけてあげるし」
捲くし立てるように喋ってはいるが、自分の反応を試しているアンコに、にやりと笑う綱手。
自分と同質のものを、彼女から感じ取ったらしい。
「わかった。隠し倉庫にある秘蔵の菓子、ちょっと分けてやるよ。
 ・・・・あそこにはねぇ、男たちには黙ってたけど、ロイ○の生チョコもあるんだよ」
「本当!?○イズあるの?うわー、あなたって良い人ね」
「って綱手さん、あんたチョコレート独り占めする気だったんですねー!!」
チョウジの叫びは残念ながら二人には届かない。
がっちりと両手で握手する綱手とアンコ。
女の友情が生まれた瞬間だった。
「・・・・・・アンコ将軍、あなた何不正取引堂々とやってんっすか!!!!!」
「うげっ」
「カカシ大佐も消えちゃったし、あなたまでそんなんじゃ駄目です!!!」
「あー、もう、うっさいわねぇ。私はこういう調査系統の任務は苦手なのよ」
「問答無用っす!!!」
嫌そうな顔をするアンコを羽交い絞めにして連れて行く兵士。
慣れた手つき。
これが初めてのことでは無さそうだ。
「・・・むこうも、色々苦労してんだな」
「「「・・・・・・ああ」」」
キバの言葉にシノ、サスケ、チョウジが同調する。
皆、あの兵士に自分たちの姿を重ねていた。