外壁の隙間と絡まったツタは、
壁のぼりには大変重宝するものだとわかった。



シカマルは一人、ただ黙々とラピュタの外壁をよじ登っていた。
一刻も早くナルトと四代目に合流しなければならない。


早く登る。
だが、決して焦ってはいけない。
焦りはミスに繋がる。ミスは即刻命取りになりかねない。

『そんなに焦っちゃだめ。リラックス、リラックス!』

そういえば、四代目と初めて会ったとき、そんなことを言われた。
ふざけた言動に誤魔化されがちだが、あの人は随分窮地に慣れている。
これでも結構、自分の中では尊敬していたのだが・・
ナルトとのやりとりを見ていてかなり覚めた。現実は悲しい。
というか単調な作業ばかり繰り返していると考えるぐらいしか
登る以外にすることがなくなってしまう。

その考えついでに、このラピュタというものは何なのだろう。
掴む岩も、ツタも、地上にあるものと何ら変わりは無い。
ただ宙に浮いているというだけだ。
四代目は『ラピュタ内部に入れば逆転できる』と言っていたが、
その内部にこの島を浮かせているものがあるのだろうか。
・・・・・飛行石の力、としか思い浮かばないが。

シカマルがつらつらと思考にふけていると、やっと壁の終わりが見えた。
そこに片手をかけるが、上から誰かが見下ろすのがわかり動きを止める。
兵士かと思い、緊張が走る。


「よ、シカマル」
「・・・・ゲンマ」

ゲンマはシカマルの右手首をがしりと掴み、そのまま一気に引き上げる。
シカマルはぺたんと床に座り込んだが、すぐに立ち上がってゲンマを見た。

「サンキュ。・・どうしてここにいるんだ?」
「どっかの誰かさんが落ちていくのが見えたんでね、一応確認」
「・・ワザワザアリガトウゴザイマス」

わざとらしく礼を述べると、ゲンマは苦笑した。
が、大分離れたところから銃声が聞こえ、二人は顔を強ばらせた。

「・・海賊たちが気になるな。ゲンマ、俺は一旦中央にいる捕虜を助けに行く」
「待て」

シカマルが走り出そうとすると、ゲンマは声で止めた。
随分と、冷静な、淡々とした声だ。

「シカマル、おまえ、あれ持ってるよな」
「・・ああ」
「おまえが海賊たちを助ける間に、もしかしたら
 ラピュタは九尾に支配され、地上も危険に晒されるかもしれない」
「九尾が復活したのか!?」
「さっき、巨大で禍々しい気が突然出現した。まず間違いねぇな」
「・・・」
「仕事としてここにいるなら、あいつらを見殺しにするべきだ。
 それともただのシカマルとして、世界を見殺しにするか?
 言っておくが、時間はそんなにねぇぞ」

ゲンマは優しい。
そちらはそちらで忙しいのに、こうして自分を、世界を気遣ってくれる。
だからこそ、シカマルは彼に自分の意をきちんと示すと決めた。

「俺は、世界もあいつらも見殺す気はない」

シカマルは『あれ』と呼ばれたペンダントをポケットから出した。
ゲンマはこれをとてつもなく嫌っていて、出した瞬間一歩下がった。
・・・だったら話題に出さなければいいのに。

「シカマル、お前にできることか?」
「コレに誓う」

ぐいっとゲンマに近づけると、彼は苦々しげに頷いた。
かなり効果的で便利だ、これ。

「わーった、わーかりましたっ!!
 ・・・もしかしたら、ハヤテも手助けにそっちにいるかもしれねぇしな」
「悪ぃな」
「悪いと思うんだったらさっさと行って即効終わらせろよ!
 俺はラピュタの中に入れる道を探す」


ゲンマを説得(脅迫)し、シカマルは走り出す。
もう一秒も無駄にしたくはなかった。









ゲンマはシカマルの去った道を、じっと眺めていた。
本来なら、自分は彼を何が何でも止めて、自分と来るよう従わせるべきだった。
彼には少数の命よりも世界を守る義務がある。
だが、不思議とゲンマにはシカマルを行かせて間違ったとは思っていなかった。

「・・あんな顔で、助けるなんて、言われたらなぁ」

彼は変わった。
しかも、かなり良い方向に。
それが嬉しいと思うと同時に、少しの間にここまで成長する
子どもというものに驚いていたりする。

「・・・あー、これじゃ、俺ってシカクさんと同じただの親ばかじゃん・・」

がっくりと項垂れ、ゲンマは笑った。
親でも何でもないのに、親心が芽生えてしまったらしい。






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