「ねえ、おまえ、誰だよ?」
「・・・・九尾って、呼ばれてるなぁ」
にやりとカカシは笑って見せた。
顔の半分を覆っていた布を取ってしまって、
その禍々しく吊り上げた口がよく見えた。気持ち悪い。
俺は今、この『九尾』と名乗っているカカシに手を引かれ、
どこかに連れて行かれている。
何故だか、九尾はここら一体の部屋の仕掛けに精通しているらしく、
一度も迷う素振りも見せず奥へ奥へと進んでいる。
「ここだ」
九尾は俺を一度見て、俺の飛行石を扉にかざす。
いきなり壁やドアが消失してしまうのは、もう慣れた。
中の部屋にずかずか入っていくので、俺も急いでついていった。
あんまり時間を置くとドアが閉まってしまう。
今までの部屋と違い、木の根がいっぱいはびこっていた。
自然ってすごいね。どんな科学も適わないと思うよ、うん。
・・と思わず感動するぐらいすごかった、根が。
俺が勝手に感心しているのを、何故かカカシ・・いや、九尾は勘違いしたみたいで、
つらつらと説明しはじめた。
「ここは、このラピュタを支える飛行石をコントロールするコアだ」
「・・・ふーん」
「つまんねぇな、もっと驚けよ」
「で、九尾さんはこんなとこに何で来たの?」
「ラピュタを乗っ取るため」
「え?」
九尾は不思議そうな顔で俺をまじまじと見る。
「本当に覚えてないんだな。おまえが小せぇ頃、
俺、一回このラピュタで大暴れしたんだぜ?」
「・・わかんない。それで、どうなったの」
にやにやとした顔。嫌だ、何で聞き返しちゃったんだろ。
聞きたくない。だめ、聞いちゃだめ。
だが九尾は口を開いた。
「おまえの腹に封印されちまった」
ばちりと、頭に痛みが走った。
見覚えのない風景が一瞬よぎる。
違う、思い出したんだ。
「おまえの親父は手ごわくってなぁ、結局俺が競り負けちまって」
そう、俺はまだずっとガキだったけど、その戦いを近くで見ていた。
親父も九尾もズタボロで、血がだらだら出てて怖かった気がする。
「でもあいつも俺を完璧に殺せるほど体力は無かったわけ。
それで一時的に、俺をおまえの腹に封印したのさ」
覚えてる。
『ナルくんごめん、本当にごめん』
頭上で親父が涙でぼろぼろになりながら、呟いていた。
俺はわけがわからなくて、それでも親父が泣いてるのが悲しくて、
一緒になって泣きそうになってた。
「でも、ガキのおまえじゃ、俺を同居させるには不十分で」
「やめろっ!!!」
俺は思わず叫んだ。
こいつの話を聞きたくない。
昔のことを思い出したくないとか、そういうわけじゃなくって、
こいつの口から聞きたくなかった。
思い出せないなら親父に聞く。間違っても、九尾に、じゃない。
「おー、怖ぇ。ま、いいけどよ。どーせしばらくは俺と二人で暮らさなきゃいけないんだ」
「・・・・・殺さないの?」
「おまえラピュタの正当な後継者だろ?
もしその血とかが必要な仕掛けがあったら俺だけじゃ起動できねぇし」
「・・・・・・」
そう言って、九尾はラピュタ語らしきよくわからない文字を眺め始めた。
・・・・なんとかして逃げないと。
・・・・・・いや、折角ラピュタのコアまで来たんだから、
隙を見て乗っ取ちゃえばいいんだ。
そうだ、こんなとこで逃げるなんて、だめ。
シカマルも親父もここまでたどり着けるかどうかなんてわかんないわけだし。
俺がやらなきゃ。
全てはシカマルとの明るい未来のために・・・・!!
俺がにへらと笑ったのを見た九尾は、何故か急に顔をそむけた。
「・・おまえ、やっぱ四代目の息子だぜ・・・その表情親子で瓜二つだ」
・・・・・・・何、その反応。すごいむかつくんだけど。
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