「ねー、綱手さまー、暇ー」
「おい、キバ。俺たちは縛り首になるんだから暇な方が有り難いだろ」
「縛り首?僕そんな苦しそうな死に方嫌だなぁ」
「・・・・ってか死ぬのに、おまえら余裕だな」

海賊四人組はだらりとリラックスした様子でわいわい話している。
サスケ・・こっちから見ればおまえも余裕そうだ。

「で、綱手。本当にどうすんだ?」
「んー・・・誰か脱出道具持ってる奴ー」

誰もが首を横に振る。
綱手は深くため息をついた。

「しょうがない。誰かが助けてくれるのを待つか、
 場が混乱してきたらそれに乗じて逃げるよ」
「「「「はーい」」」」

あまりにまとまった大きな返事に、近くにいた兵士が
眉を顰めながら近づいて、話しかけてきた。

「・・ってか、見張ってるのに堂々と脱走計画しないでください」
「あんたもアンコ将軍だっけ?あの人の世話大変そうだよな」
「そうなんですよぉぉぉ!!将軍ったら型破りだから
 俺ら普通の部下なんてついていくのすら一苦労なんっすー!!!!」

突然態度を変えて泣き言を言い始めた兵士に、後ろから蹴りが入った。

「あんたもなに海賊と仲良くだべってんのよっ!!!」
「あ、すみません」
「・・ったく、無能な部下を持つと辛いわ」


アンコは頭を振りながら更に部下の背中を叩いた。
・・・多分、突飛な部下を持ったほうが辛いと思うのだが。


「将軍ー!」
「何よ?」
「無線機が全て破壊されてます!!カカシ大佐の仕業だと見張りが証言しているのですが」
「・・・ったく、あのボケ。正体現しやがったわね」
「何でも、この島の壁にいきなり穴が開いて入っていったらしいですが・・
 どうしましょうか?」
「総員、カカシのボケを探しなさい。中に入ったんなら入り口を探して」
「はいっ!!!」


「なんだい、内部分裂かい・・」

綱手の呟きに目ざとく気づいたアンコがこちらを向いた。
別に海賊の不躾な発言に怒っているわけではないらしい。

「そうなのよ。カカシってのは政府から配属されたクチでねぇ・・
 ラピュタに異様に固執してたから何かするとは思ってたけど・・・」
「ってアンコ将軍、あなた何海賊に情報漏らしてるんっすかぁ!!」
「あら、話し相手って欲しいじゃない」
「よりにもよってですよ!!!!」


兵士に連れて行かれたアンコを見送り、
再び海賊たちはこそこそと話を始める。

「で、どうします?何かいい感じに混乱が起こってますが」
「・・・脱出、したいけどまだ引き付けがたりないね。それに縄の問題もあるし」


しばらく待機・・・・そう綱手が言おうとしたとき、
何やら下の床が動いた。
ガッ、ガッ、ガッ・・・
石を削り取るような音と振動。
様子を見ていると、いきなり綱手が足を置いていた床の部分に穴が開いた。

幸い周囲には気づかれていない。
綱手はばれないようにこっそり穴をのぞく。

中からシカマルの顔が覗いた。

「シカマルか・・」
「はい。綱手さん、今から縄切るんで動かないでください」

どうやら背後にも穴を開けていたらしい。
ゴリゴリと音がして、急に縄の圧迫感が消えた。
そのままナイフの柄を握らされる。

「これで皆の縄切って脱出してください」
「おまえらは?」
「・・・ナルトがカカシたちに拉致られました。助けに行きます」
「そうか・・バズーカ持ってきな」

綱手は穴に右足を突っ込み、そのズボンの裾からバズーカを落とした。
弾も何発か入っていたはずだ。

「・・・・・よくこんなの服に入れてますね」
「私たちは海賊だよ?」
「そういえば、そうでしたね」
「ったく・・・ああ、使い方わからないよな、教えないと・・」
「いえ、バズーカなら大丈夫です。じゃ、俺行くんで」

シカマルはそう言い残して走っていってしまったらしい。
がらんといなくなった穴を見て、綱手は眉を顰めた。

「何で使い方知ってるんだ・・・?」


シカマルの家は、どうみても普通の民家であったし、
彼自身も明らかに頭脳労働派で、暗号の解析を主に仕事にしていた節がある。
まあそれぐらいなら理解できる頭さえあれば良いから問題視しなかったが・・
いくらなんでも、バズーカなんて武器を教えられずに使いこなせるものなのか?

ナルトもどこかきな臭い子どもではあったが、
どうやらシカマルまでそうだとは微塵も思わなかった。
だが・・そうだ、よく考えればこんな軍に囲まれて切迫した状況で
あそこまで行動できるのも、十分普通じゃない。

「・・まったく、厄介な子どもたちを拾っちまったねぇ」
「ふん、口で言うほど嫌がっておらんくせに」
「・・・・・うるさい白髪」

後ろ手でナイフを自来也に渡そうと思ったが、あえて反対側にいたキバに渡した。

「のっ、ちょっと、綱手ぇ!?」
「お前なんて一番後回しだ!バレたら縛られたまま全力で走ってくれ」
「ひっどいやつじゃのぉ・・」







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